ピンク・フロイドのニック・メイスンが語る、バンドの過去と今、そしてこれから...

ピンク・フロイドがロック界の伝説的バンドであるという評価は、今もなお変わりない。しかし、限界をものともしないバンドだけに、ファンも彼らの過去の音楽には飽きたらず、新たな音楽をさらに求めているようだ。もしくは、彼らの再結成を期待してやまないともいえる。

今のところ"新作"と呼べる作品は発表されていないものの、ピンク・フロイドはこのたび、過去の楽曲のほか、山ほどある未発表曲や別テイク、ライヴ音源を、リマスター盤、ボックス・セット、ベスト・アルバム、コレクターズ・ボックスなどさまざまな形態でリリースする。9月26日に発売となる『The Dark Side of the Moon(狂気)』を皮切りに、「Why Pink Floyd...?(なぜ、ピンク・フロイドなのか...?)」と銘打たれた世界的なリリース・キャンペーンが幕を開けるというわけだ。

これを受け、<Spinner.com>が、ドラマーのニック・メイスンにインタビューを敢行。今回のリイシューをはじめ、初期の中心メンバーだったシド・バレットや、ロジャー・ウォーターズ、デヴィッド・ギルモアらメンバーとの関係に迫った。


Spinner.com(以下、S): 今回のリリース・プロジェクトはいつ始動したのですか?
たしか2年前だったかな。(ピンク・フロイドの所属レーベルの)EMIが当時、ビートルズのリイシューにご執心でね。過去の歴史から見ても、我々は完成したアルバム以外のものを作品として出すということに、ずっと反対してきた。ただ、ビートルズのリイシューの成果を見るにつけ、どうやら世間の人たちは、こういった作品を聴いたり、オリジナルと比較したりして楽しんでいるようで...私自身はそういうのを認めたことは一度もないが、世の中には『The Dark Side of the Moon』を5つの異なるヴァージョンで聴きたいという人も実際にいるということに、気付き始めたんだ。それならそれで、まあいいかなと。我々がオリジナルに何かくっつけて出してやろうとしている張本人だなんて、誰も思わないのなら、私はそれで満足だよ。同じ曲を何度も売りつけようとしてるとファンに思われるのだけは、絶対に嫌だからね。

S: あなたにとってはシド・バレットの曲が特に印象深かったようですね?
あれはかなり初期のデモ・テープだった。まだ契約するずいぶん前に作ったものだよ。そのとき我々はリック(・ライト)の友達が所有していたスタジオに2~3時間入ってね。「I'm a King Bee」の最高のヴァージョンが出来上がった。シドがスライドギターを弾いてるんだ。(1979年のアルバム)『The Wall』とは何万光年もかけ離れた、ピンク・フロイド節全開の曲だよ。シドの曲でほかにも「Walk With Me」ってのがあるんだけど、こっちはリックの奥さんのジュリエットが歌ってるんだ。まるで写真付きの日記を見ているようだ。過去に逆戻りさせられるような感じさ。45年前の、今とは別の1日、別の時代、別の人生。そう、当時の自分にね。

2005年、チャリティー・イベント「Live 8」での再結成ステージで「Money」を披露するピンク・フロイド

S: 以前インタビューで、あなたはロジャー・ウォーターズのことを"しゃくにさわる"と言っていましたが、今ではそれも笑い話ですか?
そうだね。そのことについては、今では笑い飛ばしてるよ。といっても、いまだにあいつのことは、しゃくにさわるけどね。だが、あいつがもし、そういうタイプじゃなかったら、これまで我々が作ったような作品は存在しなかっただろう。我々のように長いこと誰かと一緒にいると、しまいには互いのことを知りすぎて、互いをいらだたせるようになるものさ。だが逆に、我々がこうじゃなかったら、今までのような成果は残せなかっただろう。いいものを作るには、ろくでなしと仕事をしなくちゃならない。その事実を受け入れたまでさ。

S: 先日、ロジャーの公演であなたたちが行なった再結成ステージは、喜びに満ちていましたよね。
そうだね。最高だったと思う。唯一、残念なのは、我々がまた近々ツアーに繰り出すだろうとマスコミが言い出すことだね。まあ、絶対にありえないけどさ。ただ、できればいつか、(ツアーとは)別の素敵なことを一緒にできたらとは思うよ。

2011年5月、ロジャー・ウォーターズの公演に登場するニック・メイスンとデヴィッド・ギルモア

S: ロジャーのツアー「The Wall Live」のロンドン公演に、あなたとデヴィッドも出演しましたよね。あのときは緊張しましたか?
デイヴはビビってたと思うよ。なんたって、いきなり(ステージ上の)12メートル以上もある塔に登らされたんだからさ。あいつは30年前にも登ったけど、確か当時もおびえていたっけ。今回は前よりさらに高くなってたから、ロジャーに塔の底を揺らされるんじゃないかとおびえていたよ(笑)。

S: (ピンク・フロイドの今後の活動に関して)ロジャーは何もしたくないと言っていますが、あなたとデヴィッドは何か具体的に話し合ったりしていますか?
いいや、それはない。デイヴと私とでまた何かをやるのは可能だと思うが――もし彼がそれを望むのなら、私はもちろん協力するよ。ただ我々の中で、どんな形態であれ、1年半のツアーに出たいと思っている人間は、実際にはいないと思う。

S: チャリティー・ギグでまた再結成してくれそうな気もしますが。
そうなったら最高だね。完璧だ。ただカネのためにやるよりも、理由としてはずっとまともだな。

S: ほかのアーティストのように、もうけるためにやるわけではないと。
残念ながら(笑)。妻と4人の子供たち、それに40人の愛人たちを養うためさ(笑)。
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