皆藤愛子先生は、普段からメガネをかけている。
彼女は去年、早稲田大学第一文学部に合格し、キャピキャピの女子大生としてモテモテのキャンパスライフを送っている......と思いきや、どうやらそうではないらしい。
せっかくの冬休みだというのに旅行にも行かず、今年大学受験を控えたぼく、相沢直の家庭教師を買って出てくれるぐらいだから、真面目な顔をして勉学に勤しんでいるのだろう。わりと美人さんなのだから、メガネを外してコンタクトにでもして、ファッションに気を配ればクラスメイトも放っておかないだろうと思うけど、彼女は派手なことが好きじゃない。昔から、そういう性格なのだ。
と、皆藤愛子先生の顔を見ながらぼんやりそんなことを思っていたら、ぱっと目が合う。ヤバい。ぼくはノートに目を戻し、
「えーっと、ここが仮定法だから、こっちは現在完了形で、っと......」
と、勉強に集中しているフリをしてみるが、ちょっとわざとらしすぎたみたいだ。
「相沢くん! もうちょっとなんだから、頑張らないと。集中集中!」
皆藤愛子先生は、立ち上がって、ぼくのすぐ後ろにちょこんと座り、ノートを覗きこんでくる。
「どっか、分かんないとこ、あるかな?」
分かんないとこ。そうですね。取りあえずいま現在分からないのは、何で女の人ってこんんなに良いにおいがするのか、ってことでしょうか。そんなこと言えないけど。
皆藤愛子先生は、メガネ越しに、透き通った目でぼくを見つめている。いやいやいや。こんな状態で、勉強に集中しろなんて、そんなの無理だってばよ!

(※注)
本記事は個人の妄想を勝手に書き連ねたものであり、以下の写真は本文の内容とは一切関係ありません。