東洋経済・山田氏もNewsPicks・佐々木氏も両方を応援していこうぜ!

中川淳一郎


朝日新聞社が運営するwithnewsに3回にわたって掲載された東洋経済オンライン編集長・山田俊浩編集長のインタビューは、実に示唆に富み、サイト運営のモデルともなるような立派なインタビューである。すべてのネットメディア運営者は心して読むべきであるっ!とここで指摘したい。

しかしながら、我々社畜の味方サイト・The Hardworkers編集部に対しては、各所から「佐々木さんとその子分を擁護してやってくれよ!」と嘆願の声があがってきたのだった。
それは、山田氏が佐々木紀彦前編集長について言及した部分についてである。佐々木氏は、東洋経済オンラインを月間5100万PVにまで上げた立役者として、2013年に多数の場所で取り上げられ、『5年後、メディアは稼げるか』という著書も、メディア関係者の間では必読の書とされた。

山田氏は佐々木氏が、後輩2人(前述の「子分」のことね)と一緒に抜けた後もPVが増え続けたことを説明。そのうえで、山田氏がアサインしたスタッフとともに、佐々木氏時代と同じ人数で仕事はしていると説明した。そして、現在の躍進の裏事情をこう解説する。

<「残念ながら、佐々木君の時代には、PVを取れない記事もありました。悪口を言う気はないですが、彼らは好きなものを書いていましたから。メディア論やベンチャー論。そういうのはあまりPVがとれない。そうではなく、企業で今何が起きているのかをタイムリーに追って、経済ニュースを読みたい人たちに届けると爆発的に読まれる。『ユニクロ 疲弊する職場』とか『ソニー 追い出し部屋の実態』とか。佐々木君時代にPVが最大5100万に届いたときは、そういうヒット作が集中したんです。そうした記事は佐々木君のオンライン編集部ではなくて、週刊東洋経済編集部がつくったものでした」>

オレ達のところに嘆願の声を寄せた人々の意見を大別すると以下のようになる。

・記事はとても立派である。そこに異論はない。
・佐々木氏以降、PVが上がったとはいっても、佐々木氏の功績をもっと言ってあげても良いのでは。
・現体制が手柄の総取りをしている感覚がある。
・前任者の悪口を言ってるのはカッコ悪い。


確かにオレも東洋経済オンラインが「佐々木さん以降の方がむしろ上がってるんですよ!」という声は関係各所から聞く。それは、現在残った人々(編集・広告・紙媒体)が、各所で「佐々木さんが抜けてタイヘンですね・・・」などと言われ、「(チッ、またこの質問かよ、ケッ)いや、むしろ上がってるんですよ・・・」と答えたからだろう。オレ自身もこのやり取りは経験したことがある。

そして、残った人からしたら突然の社内体制の変更やら、広告主への説明に追われたかと思ったらイケメンのI君も突然佐々木氏を追っかけて退社してしまう!どーいうこっちゃ!!! と思い、「んもぅ、佐々木ィ・・・」と少し愚痴りたくなった矢先の「佐々木さんがいなくなって大丈夫なんですかぁ・・・」という外部からの質問連発。さすがにカチンと来て発奮、さらには今回のwithnewsでの高度な形での佐々木氏へのチクリという流れになったのかもしれない。

The Hardworkers編集部は、各地の社畜情報をGETするべく、様々な会社にスパイを紛れ込ませているため、今回名指しで批判された佐々木氏側の情報も多少は入っている。どうやら「静観」という方向に徹するらしい。

さてオレは、山田氏の「そうした記事は佐々木君のオンライン編集部ではなくて、週刊東洋経済編集部がつくったものでした」という発言に注目したい。ここの意図は「元々紙メディアの記者が頑張って作ったものであり、佐々木がすげーワケじゃない」とも解釈できる。オレ自身、2010年に小学館に入り込み、NEWSポストセブンというサイトの立ち上げにかかわった過去を持つ。同サイトは、週刊ポスト、女性セブン、SAPIO、マネーポストの4誌から記事を使わせてもらう許可を得て、ネットでニュースとして配信している。

故に、紙メディアの記者の協力を取ることがいかに大変かは理解している。紙の記者からすると「なんで無料で読ませなくちゃいけないんだよ」と思うだろうし、タイトルが変わったりすることも嫌がるからだ。だからこそ、彼らに理解をしてもらうべく、小学館の社内スタッフが丁寧な調整をし、サイトも5年目に突入できたわけだ。その過程には、ネットが大嫌いな著者の原稿は載せない、無駄な炎上をもたらすものは載せないといった調整を紙メディアの編集者と適宜行っている。
佐々木氏だって、東洋経済オンラインが5100万PVに到達したことは、ネットオリジナル記事の力だけでないことは理解しているのは間違いないし、佐々木氏主導になった段階で相当な社内調整をしたことだろう。故に、オレと彼が一緒に登壇したイベントでも、紙媒体の記事の取材力の高さに感謝していた。

NEWSポストセブンも「誌面発」と「ネットオリジナル」の2本立てで記事を掲載しているが、とにかくPVを稼いでくれればどちら発でも良い。「そうした記事は佐々木君のオンライン編集部ではなくて、週刊東洋経済編集部がつくったものでした」という発言はしないだろう。ネットメディア全般の立派な話をしているというのに、ここだけ「手柄を現体制がいかにどう取るか」「出世への道――Road to SHUSSE」といった妙なセコさを感じてしまうのだった。

さて、オレ自身は、以前、サイバーエージェントの藤田晋社長が、「目をかけていた社員が突然移籍し激怒」というスタンスを「社畜」の鏡だと支持した。だからこそ、山田氏の今回の件についても、どちらかといえば「残された側」である山田氏らがそこから発奮し、今の東洋経済オンラインを作ったことに対しては称賛の声を送りたいのである。

しかし、事情はもう一つあって、オレにはどうしても佐々木氏のあの飄々として、甲高い声が頭に残ってしまってるんですよ。新聞社のセミナーに講師として参加しているというのに「僕は新聞なんか読まない」と言い放ち、ニュースピックスへの転職について「出世したかったってだけだろ?」と言われても「いやぁ、それはぁ・・・、てへっ」とやるような天然っぽさがあり、憎めない人物なのである。あとは「最初にデカいサイトを作ったヤツはエラい」ということを同業者としても思ってしまうのだ。

しかも、今回、親分・佐々木紀彦を慕う子分・I君が「佐々木さん! オレもついていきます!」と言ったところ、まさに高倉健の東映ヤクザ映画のごとく、「おい、I、てめぇは東洋経済に残りやがれ! 貴様がオレの下で再び働くのは、ニュースピックスが安定し、貴様の生活を安定させられる状態になった時だ! 二人して共倒れになったら元も子もねぇだろ! この野郎! バカなこと言ってるんじゃねぇ!」(多少の脚色あり)と言ったという話も漏れ聞こえてくる。

それでもI君は「いや、オレは佐々木さんとしか働きたくありませんっ!」とばかりに佐々木親分についていき、未知なる世界・ニュースアプリ界の開拓に乗り出したのだった。あぁ、美しき社畜精神よ、といったところがあったのですね。まさに男版センチメンタルジャーニー的なものがあり、こういったサイドストーリーを聞いてしまうと、山田氏にも、佐々木氏にも、両方に肩入れしたくなってしまう。普段のオレからすれば、「この野郎! 貴様!」とどちらかを叩いているところだというのに、妙にモジモジとしてしまうのである。

というわけで、我々の元に嘆願書を送ってくれた皆さん、こうしてオレらも編集長とともに会議をしたうえで、どんな声明を社畜として発信するかは悩んだ。
まぁ、山田氏も佐々木氏も立派な人物だと思うので、両方を応援しとこうぜ、なんてゆるい結論になってしまった。申し訳ない、申し訳ない。

文・中川淳一郎
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