第64回カンヌ国際映画祭特集 受賞結果一覧
さて、カンヌ国際映画祭の幕が閉じた。
前回のオフィシャルセレクション紹介を読んで頂いたかと思うが、今回の受賞結果はAOL編集部として納得していると言えるだろう。

パルムドールは、『The tree of life(ツリー・オブ・ライフ)』が受賞した。予想できたことだった。テレンス・マリック監督がこの映画の製作に少なくとも10年間、またはそれ以上の 年数をかけたのではと、思わせるほど非の打ちどころがない仕上がりになっている。本作の美しさは、難解、観念的な大作にふさわしく、スケールが大きい。今 年の審査員は、その壮絶なスケールに感化され(すぎ)たに違いない。しかし、この映画はその難解さのため、論争の的となり、上映会の観客のリアクションは 賛否両論だった。作品の難解さは、『2001年宇宙の旅』に匹敵し、理解可能になるまで15回は見直さないといけないのかもしれない。そして、この作品の 謎をさらに深めることに、テレンス・マリック監督(彼は病的な恥ずかしがり屋)はもちろん受賞式を欠席していた。
グランプリを同時に受賞したのが、『 Bir Zamanlar anadolu'da(昔々アナトリアで)』 と『Le Gamin auVélo(自転車と少年)』だった。前者だが、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督は、見事に倦怠を描くことに成功した...彼はまた、映画祭期間中、比較にな らないほど美しい映像とカメラワークが自分の映画の見どころだと、語っていた。後者だが、またもやダルデンヌ兄弟の実力を見せつけられた。シンプルで正義 感のあるこの物語は人を感動させた。しかも、いつもの低予算で。2人は紛れもなく、巨匠の域に達している...映画の勉強になるよ。
男優賞に輝いたのは、ジャン・デュジャルダン。この映画祭の最高の便りだ。私たちは、才能あふれる彼がブラッド・ピットの主演の座を絶対に奪うと確信していた。予想は見事に的中。無声映画、『The Artist(アーチスト)』での彼の演技は驚異的だ。そう、無声映画なのだ。早く日本の皆さんにも、もっとよく知ってもらいたい俳優だ。
女優賞は、キルスティン・ダンスト。下馬評で予想されていたのが 『We need to talk about kevin』のティルダ・スウィントンだっただけに、少しびっくり。少々がっかりしたが、審査員たちは結局、ラース・フォン・トリアー監督が巻き起こした スキャンダルがあったからといって、『Melancholia(メランコリア)』の作品まで罰しなかったのだね。ラースは記者会見で、アドルフ・ヒット ラーに共感できるという失言をし、「好ましくない人物」というレッテルがはられ、映画祭から追放されたのだ。映画祭史上、前代未聞のことだった。気の毒に キルスティンは、賞を受賞する時、気まずかっただろうに...残念だ。
監督賞は、『Drive(ドライブ)』のニコラス・ウィンディング・レフン監督。カンヌ映画祭でも、ギャング、カーチェイス、復讐混じりのフィルム・ノ ワールが通用するなんて、喜ばしいことだ。監督の演出は、この手の映画のファンたちにはたまらなく、苦手な人たちをも魅了するに違いない。これで、カンヌ 映画祭は、全ジャンルを網羅していることを証明し、毒舌家たちを黙らせてくれるだろう...
脚本賞は、ヨセフ・シダー監督の『Hearat Shulayim』が受賞。本作には、映画評論家たちも満場一致だった。扱ったテーマにオリジナリティーがあったものの、今年の審査員たちの趣味を疑うほ ど、演出が悪く、とりわけ注目されていなかった作品だった。いつ日本で劇場公開されるのか、目をこらしておこう。まあ、きっと公開されないだろうね。
審査員賞は、マイウェンの『Polisse(ポリス)』が受賞。若き監督は実力を見せつけた。彼女はとても難しいテーマである、社会の貧しさを見事に描い た。評論家たち全員は、彼女が何かの賞を絶対に取ると思っており、何人かは彼女がパルムドールに耀くことを夢見た。一つだけ確かに言えることがある。マイ ウェンはまたいつかカンヌに戻り、その時きっと...
で、日本勢はどうだったのかな?全くだめだったみたいね。河瀨直美も、三池崇史も、カンヌをうなずかせることはできなかった。まあ、今年の顔ぶれは確かに 素晴らしく、競争もかなり厳しかった。残念なのは、この2人に対してほとんど何の批評もなかったことだ。今年のセレクションの中で、日本の影は薄かった。 一度冷静になって、ストーリー構成に非常に厳しい、世界の観客に向けて、もっと脚本を磨いた方が良いかもしれない。海外で邦画はとても人気だが、その弱点 はしばしば指摘される。日本はこれまでいくつかの賞を既に受賞しており、間違いなく、これからも受賞することだろう...では、来年のカンヌ映画祭でまたお会いしましょう!
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前回のオフィシャルセレクション紹介を読んで頂いたかと思うが、今回の受賞結果はAOL編集部として納得していると言えるだろう。

グランプリを同時に受賞したのが、『 Bir Zamanlar anadolu'da(昔々アナトリアで)』 と『Le Gamin auVélo(自転車と少年)』だった。前者だが、ヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督は、見事に倦怠を描くことに成功した...彼はまた、映画祭期間中、比較にな らないほど美しい映像とカメラワークが自分の映画の見どころだと、語っていた。後者だが、またもやダルデンヌ兄弟の実力を見せつけられた。シンプルで正義 感のあるこの物語は人を感動させた。しかも、いつもの低予算で。2人は紛れもなく、巨匠の域に達している...映画の勉強になるよ。
男優賞に輝いたのは、ジャン・デュジャルダン。この映画祭の最高の便りだ。私たちは、才能あふれる彼がブラッド・ピットの主演の座を絶対に奪うと確信していた。予想は見事に的中。無声映画、『The Artist(アーチスト)』での彼の演技は驚異的だ。そう、無声映画なのだ。早く日本の皆さんにも、もっとよく知ってもらいたい俳優だ。
女優賞は、キルスティン・ダンスト。下馬評で予想されていたのが 『We need to talk about kevin』のティルダ・スウィントンだっただけに、少しびっくり。少々がっかりしたが、審査員たちは結局、ラース・フォン・トリアー監督が巻き起こした スキャンダルがあったからといって、『Melancholia(メランコリア)』の作品まで罰しなかったのだね。ラースは記者会見で、アドルフ・ヒット ラーに共感できるという失言をし、「好ましくない人物」というレッテルがはられ、映画祭から追放されたのだ。映画祭史上、前代未聞のことだった。気の毒に キルスティンは、賞を受賞する時、気まずかっただろうに...残念だ。
監督賞は、『Drive(ドライブ)』のニコラス・ウィンディング・レフン監督。カンヌ映画祭でも、ギャング、カーチェイス、復讐混じりのフィルム・ノ ワールが通用するなんて、喜ばしいことだ。監督の演出は、この手の映画のファンたちにはたまらなく、苦手な人たちをも魅了するに違いない。これで、カンヌ 映画祭は、全ジャンルを網羅していることを証明し、毒舌家たちを黙らせてくれるだろう...
脚本賞は、ヨセフ・シダー監督の『Hearat Shulayim』が受賞。本作には、映画評論家たちも満場一致だった。扱ったテーマにオリジナリティーがあったものの、今年の審査員たちの趣味を疑うほ ど、演出が悪く、とりわけ注目されていなかった作品だった。いつ日本で劇場公開されるのか、目をこらしておこう。まあ、きっと公開されないだろうね。
審査員賞は、マイウェンの『Polisse(ポリス)』が受賞。若き監督は実力を見せつけた。彼女はとても難しいテーマである、社会の貧しさを見事に描い た。評論家たち全員は、彼女が何かの賞を絶対に取ると思っており、何人かは彼女がパルムドールに耀くことを夢見た。一つだけ確かに言えることがある。マイ ウェンはまたいつかカンヌに戻り、その時きっと...
で、日本勢はどうだったのかな?全くだめだったみたいね。河瀨直美も、三池崇史も、カンヌをうなずかせることはできなかった。まあ、今年の顔ぶれは確かに 素晴らしく、競争もかなり厳しかった。残念なのは、この2人に対してほとんど何の批評もなかったことだ。今年のセレクションの中で、日本の影は薄かった。 一度冷静になって、ストーリー構成に非常に厳しい、世界の観客に向けて、もっと脚本を磨いた方が良いかもしれない。海外で邦画はとても人気だが、その弱点 はしばしば指摘される。日本はこれまでいくつかの賞を既に受賞しており、間違いなく、これからも受賞することだろう...では、来年のカンヌ映画祭でまたお会いしましょう!
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