やっぱりラテン系がいい~ハリウッドのラテン系映画考察

近年、アメリカの州によっては、南米出身のラテン系や黒人などの非白人の数のほうが白人よりも多く、白人はマイノリティになりつつあるらしい。映画を観る目の肥えた客の多い主要都市部(ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、ボストンなど)でも、非白人の数が増えている。映画の種類によってはテストマーケット的に、こういう主要都市部で先に公開されることも多いので、そんな土地での評価や興行成績がその後の全米公開の成功を左右することも多い。

私の居たロサンゼルスでは、メキシコからの移民やその2世、3世が非常に多かったので、スペイン語圏で制作されたラテン映画はまずこの街で公開される。そもそもメインストリームでない映画の好きな私。だんだんとこういう映画が好きになり、いまやかなりのファン。当時、メキシコの若いイケメン俳優、ガエル・ガルシア・ベルナルに恋していて、インターン先のサンダンス・インスティテュートで彼の出演した短編を内緒でダビングして日本に持ち帰ってきたりもしていた。その彼の「アマロ神父の罪」という、若い神父が村の娘を妊娠させて~、みたいな内容の映画を観に行った際は、観客は私以外全員メキシコ系。主題的にタブーというか、メキシコではキリスト教を冒涜したといって暴動も起きたぐらいの映画だったので、観客たちのデカイ反応にいちいちビビっていたことを思い出す。

日本では、ラテン系映画ってあまり当たらないと知り合いの配給や映画祭関係者の方々がぼやいていた。スペイン映画のサスペンス・スリラーものとか、ペドロ・アルモドバルのような著名な監督のものは、地味でもファンはそこそこついているのだろうが、興行的には相当厳しいらしい。

そんな一方で、実は、メキシコやスペインからの俳優や制作系の人たちってハリウッドのメインストリームにうま~く着地してる。歴史的にはヨーロッパの才能がハリウッドに流れていくのが多かったけれど、最近はメキシコとかブラジルなど南米の才能がハリウッドで活躍しているのが気になる。俳優は周知のごとく、スペインからは古くはアントニオ・バンデラス、ペネロペ・クルスとかそのダンナのハビエル・バルデムなどがいるし、メキシコからはサルマ・ハイヤックなど数え切れず。ここで注目したいのは制作陣。
アルフォンソ・キュアロン アルフォンソ・キュアロンの監督した「天国の口、終わりの楽園」を観た時、こんな才能がメキシコにいたのか、とかなりな衝撃だった。そしてやっぱり、この映画の成功で「ハリー・ポッター アズカバンの囚人」の監督としてハリウッドに招かれた。安定した実力のある監督のように思う。次回作は、来年米国公開予定、ジョージ・クルーニー出演の「グラヴィティ/Gravity(原題)」らしい。
ギレルモ・デル・トロ

ギレルモ・デル・トロもハリウッドとモメて一度母国メキシコに帰るものの、「ブレイド2」で復帰し、独特の映像美を追求して、アメコミの「ヘルボーイ」なども批評的・興行的に成功させた。
スペイン語映画ではあるが、その後の「パンズ・ラビリンス」ではアカデミー賞脚本賞にもノミネートされた。本人はクマみたいな見かけだけど、本当に素晴らしく繊細な作品で、私の大のお気に入り。また監督業だけでなく、プロデューサー、脚本家としても非常に精力的に活躍している。最近話題になったが、再来年公開予定の新作「パシフィック・リム(原題)/Pacific Rim」では巨大モンスターを題材に監督を務め、菊池凛子さん出演も予定されているらしい。

アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリト アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥは、主演のハビエ・バルデムがアカデミー賞にノミネートされた「Biutiful」が日本でも公開されたばかり。
私も観たが心が痛くなる秀作だった。シリアスな問題を凝った映像や編集で仕上げるメキシコ出身の監督で日本では「BABEL」が最も有名だろう。他にもメキシコにはギレルモ・アリアガ(シャーリーズ・セロン主演「あの日、欲望の大地で」)、コロンビアからはロドリゴ・ガルシア(ナオミ・ワッツ主演「愛する人」)、チリ生まれでスペイン育ちのアレハンドロ・アメナーバル(レイチェル・ワイズ主演「アレキサンドリア」)など、ハリウッドの有名女優を主演に映画製作を続けるラテン系映画人も多くいる。独特の視点で女性を描くこれらの映画に、うーん、さすがラテンの国出身の監督、と感慨深かった。

思うに、母国で成功しハリウッドに招かれてみると、土壌的にもスペイン語を話す人が多く、アジアなど他の外国人映画製作者たちと比べると、業務のハードルが比較的低いのかもしれない。その後、大手スタジオでの仕事で成功して認められ、資金的にも自分が作りたい映画をスペイン語で作ることができる。今度はそれが米国のラテン系市場に加え、母国のスペインやラテンアメリカの大きな市場での公開を狙うことができる。長い目で見れば、ハリウッドと母国両方で活躍することができるのだ。アメリカ人口統計局によると、アメリカ全人口に占めるラテン系人口の割合は、2010年時点での予測は15.5%だが、2050年には24.4%になるらしい。黒人やアジア人の人口の伸びを抜くようだし、あんな多民族国家アメリカの約3割がラテン系で占められるようになるのだ。世界人口におけるラテン系人口も今後伸びていくだろうと推測する。故に、ハリウッドのスタジオも今後このラテン系層を軽視できないのだ。
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