「モールス」~今後イチオシ、クロエ・グレース・モレッツに見るハリウッドのティーン女優

最近、あらためてハリウッドのティーン女優たちに注目している。ファッション誌などで" It Girl"などと騒がれて、着ている洋服ばかりが脚光を浴びがちだけれど、演技の実力はもう大人顔負け。子役から二十歳になる前の、微妙な年頃の彼女たち。山のようなオーディションをこなし、熾烈な競争からはい上がってくるのだから、才能があるのは当然だけれど、それ以上に何か"持ってる"というか、存在感のあるティーン達が今のハリウッドには何人かいる。

以前、学生時代に「Girl Culture」という授業を選択して、あらゆるジャンルの映画における"女の子"の描き方とその社会的・歴史的意義みたいなことを勉強したが、その中で、ホラーやスリラー、パニック映画と、思春期を迎えた主人公女子たちの関係性にとても興味があったことを思い出した。美しくて繊細。移り気で残酷。気難しくも心優しい。そして映画やメディアでのブロンド崇拝のせいか、なぜだかブロンドの若い女の子が多い。

そういう伝統を引き継ぐ演技派ティーンの中で、私が最近注目している女優がいる。クロエ・グレース・モレッツ、14歳。あのスティーヴン・キングが「この20年のアメリカでNo.1のスリラー」と絶賛した「モールス」に主演していて、試写にお邪魔したのだが、"この子は絶対、来る!"と直感で思った。

スウェーデンのベストセラー小説「Morse モールス」を原作としたこの映画。スウェーデン版映画「ぼくのエリ 200歳の少女」も素晴らしく良かったが、アメリカに舞台を移しても、クロエや共演の少年コディ・スミット=マクフィーの演技と、「クローバー・フィールド/HAKAISHA」の監督マット・リーヴスの押し引きの巧い演出と、映像の美しさなど、サスペンス映画の要素が巧く混ざり合った秀作だった。

雪に閉ざされた町に住む孤独な12歳の少年オーウェン(コディ・スミット=マクフィー)と、引っ越してきたばかりの謎の少女アビー(クロエ・グレース・モレッツ)。何度も会ううちに、孤独を抱える二人は徐々に惹かれあうのだが、アビーには隠された恐ろしい秘密があった。時を同じくして、町では残酷な連続猟奇殺人が起こり始め、事件の真相を調べる刑事が、二人の住む団地へとたどり着く...。確かにスリラーではあるが、少年少女二人の美しく切ない恋愛映画ともいえる。通常、ホラーやスリラーの苦手な私だけれど、思春期の繊細さや危うさと、張りつめたスリラー特有のテンションが効果的に演出されていて、すっかり映画の世界にはまってしまった。

クロエ・グレース・モレッツの何がスゴイって、その演技の幅の広さ。この数年で、「(500)日のサマー」での主人公のませた妹役、「キック・アス」での武器を自由自在に操るヒットガール役など、多様な役柄を見事に演じていて、末恐ろしい。そして今回の「モールス」での難役。MTVムービー・アワードなど数々の賞も受賞しているし、美形で、演技力もあって、意志も強く、成功すべき要素を全て兼ね備えている。既に巨匠マーティン・スコセッシ監督の「Hugo Cabret(原題)」、ティム・バートン監督の「Dark Shadow(原題)」でジョニー・デップと共演など、次回作も目白押し。勝手な予想だけれど、ヨーロッパのハイ・ブランドのイメージキャラクターにも選ばれそうな気がする。間違いなく今後最も活躍するティーン女優だ。

クロエの他に、スリラーから、ヒューマンドラマまで幅広く演じられる、個人的に注目のティーン女優は、「Super8」での美しく強い少女役が印象的だったエル・ファニング(13歳)、そしてすでにアカデミー賞助演女優賞にもノミネートされた2人。「つぐない」の個性的な演技が忘れ難く、次回作「ハンナ」も楽しみなシアーシャ・ローナン(17歳)と「トゥルー・グリッド」のヘイリー・スタインフェルド(14歳)あたりか。美しさに加えて、ジャンルを選ばない演技の巧さと幅広さ、そして品格。この品格って誰にでもあるものではなく、映画女優として成功するには最も重要な要素かも。

クロエ・グレース・モレッツ。ぜひともナタリー・ポートマンやスカーレット・ヨハンソン級の20代を迎える女優に成長して欲しい。

「モールス」 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国にて公開中
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