オトナ女子も号泣。『カンフー・パンダ2』

2008年に大ヒットした「カンフー・パンダ」シリーズ第2作目。いわずもがなのファミリームービーの王道。それはそれで良いとして、正直、自分が楽しむ映画ではないなあと思っていた。が、とーんでもない、意外や意外。琴線に触れるセリフも多く、息をつかせぬストーリーの展開といい、家族の絆という普遍のテーマといい、キャラクター達の豊かな表情や個性といい、3Dのメガネの下から涙が溢れ、しまいには号泣してしまった。

"伝説の龍の戦士"となっても、相変わらず食いしん坊で軽いノリのジャイアント・パンダのポー。カンフーの達人"マスター・ファイブ"の5人と共に、平和の谷を守っているが、そこへカンフー技を吹き飛ばす武器を開発して世界征服を狙うクジャクのシェン大老が現れる。彼との戦いの中で、ポーの中に、育ての親のピンさんに引き取られる前の記憶が蘇る。なぜガチョウのピンさんが自分を息子として育てたのか?本当の両親は誰なのか?自分は何者なのか?自分のルーツを探しながら、仲間と共に、シェン大老を倒し世界を救う旅に出る。

と、まるで実写版映画のストーリーラインのよう。ドリームワークスのアニメ作品らしい雄大な冒険物で、表面上はハリウッド定石の、勧善懲悪ストーリーに思えるが、カンフーがテーマだけに、もっと深い"道"がある。武闘アクション・ジャンルに必須の、ヒーローが不可避の宿命に立ち向かい、自身の内なる革命に出会う、みたいなこと。それに "親と子""家族の絆"という普遍の題材も盛り込まれていて、そういうシーンは本当に涙腺が緩む。今回は監督は女性。だからなのかわからないが、母性(いや、父性も)に訴えかけてくるシーンが多い気がする。上記のような題材が、よく練られたシンプルなセリフでうまく伝えられている。ちなみに英語も平易で、英語の勉強にもいい映画。

演じるキャラクターは、ただでさえ可愛かったり、癒されたりするのだが、驚くのは実に深い意味を携えた表情。"ああ、ああいうシーンの時は、キャラにそういう表情を演出するのか"と興味深い箇所がいくつもある。声の出演もジャック・ブラック(ポー)、マスター・タイガー(アンジェリーナ・ジョリー)、師匠のシーフー老師(ダスティン・ホフマン)と役者がそろうが、悪役のシェン大老を演じるゲイリー・オールドマンが一番のはまり役と思う。



キャラクター・アニメーションだけでなく、ゴンメンシティなど古代中国の世界観を忠実に演出するために、プロダクション・デザイナーたちが中国を訪れ、長期にわたって自分の眼で建築や芸術品の細部を確認し研究したとのこと。もちろん成都にもいってパンダにもあっているらしい。数秒の小さな動作でも何十時間もかけて製作するアニメーションだけに、まさに「細部に神は宿る」のだ。

この数年、批評の評価も高く且つ興収も良いアニメーション映画が多い。1作目の「カンフー・パンダ」は、アカデミー賞長編アニメーション部門にノミネートされたし、「カールじいさんの空飛ぶ家」(2009)、「トイ・ストーリー3」(2010)などアカデミー賞のアニメ部門ではなく作品賞にノミネートされたものもある。ピクサーとドリームワークス・アニメーションの2強時代は揺るがないだろうが、今後、他の制作会社も参入し競争が激しくなると、技術力だけでなく、何かを売るのにもっと基本的なこと、つまり発想力やストーリーの展開力などが勝負になる。技術は開発力のおかげでコストダウンも図れ、採用することも簡単になるのだろうが、創造力を持つ人材を確保するのは熾烈な争いとなりそう。結果、高品質のアニメ映画が今後ももっと増えて、我々観客にはうれしいけれど。

この夏、オトナも「カンフー・パンダ2」で笑って泣いて、ぜひ酷暑を吹き飛ばしてください!

8月19日(金)より新宿ピカデリー他 全国3Dロードショー(一部劇場をのぞく)
配給:パラマウントピクチャーズ ジャパン
公式サイト:http://www.k-panda2.jp/
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