「シャンハイ」~渡辺謙ほか、貫禄のアジアのハリウッドスターが大集結。

ハリウッドの第一線で活躍してきたアジアの豪華スター達が集結したこの映画。日本からは渡辺謙、菊地凛子、中国からはコン・リー、香港からはチョウ・ユンファ。そしてアメリカからはジョン・キューザック。こんな豪華なキャストがまとめて出演する機会はそうないだろう。ということで、かなり前から注目の作品だった。
映画の舞台は1941年、太平洋戦争開戦前夜の上海。欧米諸国、そして日本など、列強国が租界を置き、この魔都を制しようとしていた。米国諜報員のポール・ソームズ(ジョン・キューザック)は、同僚の不可解な死の真相を突き止めようと赴任し、その同僚は、街の黒幕アンソニー・ランティン(チョウ・ユンファ)を捜査していたことを知る。その後、あるパーティで、アンソニーと知り合い、続いて日本軍タナカ(渡辺謙)と、アンソニーの美しい妻、アンナ(コン・リー)を紹介される。ポールはその前にカジノでアンナに会っており、それ以来気になる存在になっていた。その後、ポールが追う事件は思いもかけない展開を見せる。暴き出されたのは、世界を揺るがす陰謀であり、歴史の波は、国家への忠誠か、自分の命か、あるいは生涯の愛かを問いかける...。

歴史ドラマとかサスペンスというよりも、クラシックな大人のラブロマンスとして観た方が興味深い。実在した歴史的人物を複数組み合わせて登場人物を練り上げているそうだから、任務の中で愛憎劇が繰り広げられていたのかもと思うと、葛藤がより身近に思える。その一方で、キャストが豪華すぎるせいか、話の吸引力が若干希薄に思えるかも。戦時下のエキゾチックな都市で、政治的駆け引きや暴力、危険な愛に翻弄される人間たちといった設定は少し食傷気味でもあり、また多くの要素を盛り込み過ぎて、逆にストーリーの強弱が薄い印象も否めない。例えば、菊地凛子が演じる日本人娼婦スミコの扱い方。あまり出番がなくてもったいない気がするが、実は重要な存在だけに、もう少し掘り下げた描写があったらメリハリがついたのかも。とはいえ、さすがのベテラン俳優達なので、風格のある演技をしっかり堪能できるのも確か。


この映画のプロデューサーでハリウッドの大御所マイク・メダヴォイ(「ブラック・スワン」など)は、1941年上海生まれ。思い入れの深いこの企画の脚本を、脚本家と共に約10年かけて練り、あのワインスタイン・カンパニーに託したとのこと。そして監督にはスウェーデン出身のミカエル・ハフストローム(「ザ・ライト-エクソシストの真実-」)を、キャストにはアジアのスター以外に、インディーズから大作まで幅広く活躍するジョン・キューザックをアメリカから、フランカ・ポテンテ(「ボーン・アイデンティティ」)をドイツから呼び、撮影はなんとタイとロンドン。なんとも多国籍な環境だが、その中で貫禄のオーラで光り輝いていたのが、コン・リーだ。

もちろん、威風堂々ぶりが依然スゴイ渡辺謙や、久しぶりのチョウ・ユンファをスクリーンで見られるのはうれしいが、女子としてはやっぱりコン・リーの存在感に目が釘づけになる。欧米女優と肩を並べられるアジア出身の稀有な存在だし、今回のファム・ファタールは実にはまり役。数年前「SAYURI」の記者会見にお邪魔した際、あまりの肌の白さと、顔の小ささと、華奢な印象に驚いたが、映画ではあんなに妖艶なカリスマ性を放つ。現在のアジア・エンタメ界には彼女のような成熟した大人の女優があまりいないだけに、アジア、いや、もっと世界で活躍してほしいと思う。

日本やアジアに住む映画ファンならば、自国の歴史や文化がハリウッド映画でどう表現されているか誰でも気になるところ。以前はツッコミどころ満載だったし、果ては憤慨することさえあったはず。ところが昨今は、前述のアジアの俳優や製作者たちがどんどんハリウッドへ進出しているお陰で、日本を含むアジアの映画文化のプレゼンスは過去と比べてかなり上がったように思う。私事ながらほんの少しの間だけ彼の地に住み、アジア系映画人がハリウッドで名を上げることが非常に難しいのを垣間見ているだけに、ハリウッドに挑戦し続けるアジアの才能は応援し続けたいなあと思う。

8月20日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
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