ジョン・レノンにとって最初のバンド、ザ・クオリーメン

ジョン・レノン、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスンという3人の若きロックンローラーを生み出したリバプール出身のグループ、ザ・クオリーメン。知る人ぞ知るこのバンドが、1997年に40周年を記念して再結成したとき、地元のラジオ番組が街の男性に彼らのパフォーマンスの感想を求めた。

その男性は「ひどいったらないね!」と答えたと、クオリーメンのヴォーカル兼ギタリストのロッド・デイビスは振り返る。「彼らは40年経っても、いっこうに成長していない」

そう、その通りだとバンドのメンバーも思っていた。再結成から14年目を迎え、デイビスやフロントマンのレン・ギャリー、そしてドラムのコリン・ハントンは今なお、16歳だったジョン・レノンがバンドに持ち込んだスキッフル(注1)や昔のロックを演奏している。生きていれば、2010年10月9日で70歳の誕生日を迎えていたレノン。同年11月12日には、パティ・スミスやジャクソン・ブラウン、エイミー・マンらをゲストに迎え、ニューヨークのビーコン・シアターにて、没後30周年を記念した「John Lennon Tribute」も開催された。

レノンの生涯を描いた映画『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』の公開に続き、ボストン近郊で行なわれた公演では、クオリーメンの健在メンバーがレイ・チャールズの「I Got a Woman」やバディ・ホリーの「That'll Be the Day」、そしてザ・ビートルズのアルバム『Let It Be』から「Maggie Mae」と「One After 909」の2曲を披露した。彼らはさらに「In Spite of All the Danger」も熱唱。この曲はポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンが作曲を担当した初期の作品で、映画でも注目を浴びた曲だ。
しかしながらこれらの楽曲は、観客たちにとってはほとんどどうでもよかった。彼らは、世界で最も偉大なロック・グループ、ビートルズの前身バンドのお決まりの物語を聞きたがっていたのだ。

クオリーメンは昔の思い出を語り、ジョークを飛ばすのだと、デイビスは言う。

「そうでなきゃ、僕らはただ、古い楽曲を演奏する老いぼれの集まりになっちゃうからね。アメリカ英語でいう、『お決まりの芸』ってやつなのさ」

ザ・クオリーメン「In Spite of All the Danger」(動画)

『ノーウェアボーイ...』はクオリーメンの物語を勝手に紹介したと、バンドのメンバーは言う。とはいうものの、彼らはそれに気分を害したわけではないそう。「この映画はドキュメンタリーじゃないんだ。明らかな間違いが多いのさ」とハントン。「だけど全体的には、よくできていると思うよ」

ハントンやデイビス、そしてギャリーに加え、クオリーメンの再結成時にはレノンの少年時代の親友、ピート・ショットン(ウォッシュボード(注2)担当)や、ギター兼バンジョー担当のエリック・グリフィスもいた。ショットンは健康上の問題からバンドを離れ、グリフィスは2005年に死去。そのため、現在の3人体制となった。

クオリーメンを脱退後、いす張り業に転向したハントンとは違い、デイビスは音楽活動を続けた。彼は1960年代のフォーク・リバイバルに加わったり、長年、テックスメックスなどでブルーグラス・バンジョーを弾いたりしている。ゲイリーも同じく音楽を作り続け、かつてパット・ブーンも参加していたクリスチャン・ロックのミュージカル『Come Together』では主役も務めている。

クオリーメンがビートルズに名を変えたとき、デイビスとハントン、そしてギャリーは10代だった他のメンバーと連絡を絶った。労働者階級のバックグラウンドを持つビートルズだったが、最終的に反体制文化のヒーローとなったことで、彼らの人生からは程遠い存在となってしまったのだ。

ビートルズの国際的な名声が、かつて仲間だったあどけない少年たちの延長上にあることは、クオリーメンのメンバーも理解している。レノンはシニカルな少年で、なおかつ賢くもあった。マッカートニーは社交的で、おっちょこちょいな面もあったが、やり手だった。そしてハリスンは遠慮がちで、物思いにふけることが多かった。

「僕たちには、彼らがそれほど悪くないのはわかっていた。だがマージーサイド(リバプールを中心都市とする州)には、数え切れないほどのグループが存在していたんだ」とハントン。

「実際のところ、僕たちはおこぼれにあずかっていたってわけさ。もしビートルズがこの世に存在していなかったら、僕たちだって今頃、こんなに寒々として薄汚れたバックステージにこうして座っていることもなかったろうしね!」

ジョン・レノンの70回目の誕生日に寄せた「Maggie Mae」の演奏by クオリーメン(動画)

注1: ジャズやフォーク、ブルース、カントリー、ルーツ・ミュージックなどを取り入れた音楽。20世紀前半のアメリカで誕生した音楽ジャンルで、のちにイギリスにも広まった
注2: 洗濯板と同じ形態で、栓抜きなどを使って表面の凹凸をかき鳴らす楽器
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