ポーティスヘッド、北米ツアー後に新作に着手すると約束

今年は90年代の大きな波が押し寄せた年である。その1つが2008年のアルバム『サード』を発表して以来、沈黙していたポーティスヘッドの、なんと10年以上振りとなる北米ツアーだ。予想だにしなかったまさかのライブツアーにファンは大いに喜んでいる。

このツアーはそもそもニュー・アルバムをプロモートするという趣旨では無いため、アルバム『サード』からの曲に加えて、最早クラシックと言っていい94年の『ダミー』、97年の『ポーティスヘッド』からの楽曲が中心だという。とはいえ、懐メロでノスタルジーに浸るつもりは毛頭ないらしく、このツアーが終わったら、来年1月から新しい作品に取りかかると<Spinner>に中心人物のジェフ・バーロウは話している。

「うまく行けば、またアルバムがリリースできるだろう。でも僕らにとって音楽を作ることは簡単なことじゃないんだ。いつも信じられないくらいに難しい。他のことのために作曲することの方がよっぽど楽だ。いつも大きなプレッシャーが伴うんだよ。それは成功するとか、売れるかどうかって言うことじゃなくて、ポーティスヘッドがポーティスヘッドであるための、クオリティの高い音楽を作ることに対するプレッシャーなんだと思う」

これはローリング・ストーンズからピクシーズまで、あらゆるアーティストにつきまとう大きな壁だ。ストーンズはピークの頃に比べればリリース量が格段に減ったし、ピクシーズに至っては再結成して10年に近いというのに、新曲はまだ1曲もレコーディングしていない。つまり問題は、「ヘタなものを作ったら輝かしい過去の歴史に泥を塗ってしまいかねないが、作らないことには伝説が伝説のままで終わってしまう」という二つのリスクの板挟みなのである。しかしポーティスヘッドの『サード』は評論家などもこぞって大絶賛、初となる全米トップ10を記録するなどセールス的にも成功を収め、見事このジレンマの壁を突き崩してみせた。しかし、そのことによって4作目制作へのハードルは下がったのだろうか?

「全然ならないね。『サード』でいろんなアイデアを使ったし、それらも一朝一夕でできたものじゃない。特に今は面白い音楽にするための考えを練ったり、設計をしたりするための時間も十分に無いから、余計大変なんだ。『サード』を作った頃はたくさんのインピレーションがあった。製作に取りかかる前の2年間くらいは、本当に素晴らしい音楽に浸りきっていたし。どうにかしてまたそういう状態に自分を持って行かないといけないな」

人によっては、ツアーで毎晩演奏することによってソングライティングし易い状態になれるという者もいるが、ジェフは全く逆だという。「ライブではレコードでのサウンドやあの空気感を再現するのに、大きなエネルギーがいるんだ。シンプルなロック・ソングを演奏するのとはワケが違うからね。ライブの場はとてもじゃないけど、自由に実験して曲を書くための環境とはいえないな」

それでもこの北米ツアーが、来年新作に取りかかる前にあのダークで独特なポーティスヘッドの世界に入り込んでゆくきっかけになるかもしれない。アルバムがどんな内容になるのか、今から楽しみである。
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