3Dに"におい"付きで4D体験。「スパイキッズ4D ワールドタイム・ミッション」

ロバート・ロドリゲス監督の「スパイキッズ」シリーズ、8年ぶりの最新作は、3D(立体映像)に「におい」を加え、4D体験ができるもの。3Dを観る習慣が浸透したと思ったら、今度は嗅覚にも訴える映画が出てくるとは...。映画開始前に3Dメガネと共に番号が入った"4Dミッションカード"をもらい、番号がスクリーン上で点滅した際にカード上の番号を擦ってにおいを嗅ぐという仕組みだ。
レベッカ(ローワン・ブランチャード)とセシル(メイソン・クック)は双子の姉弟。パパ(ジョエル・マクヘイル)と再婚した新しいママ、マリッサ(ジェシカ・アルバ)、そして1歳の赤ちゃんと平凡に暮らしているが、レベッカは新しいママとなかなかそりが合わない。何か隠している気がするのだ。実はマリッサは名うての女スパイだったが、出産を機にスパイ稼業から足を洗ったものの、その過去を家族に隠していた。その頃、世界中の大都市で時間が早まる奇妙な現象が起こる。それは世界滅亡を企むチックタックとタイムキーパーの仕業だった。以前のボス(ジェレミー・ピヴェン)から連絡を受け、マリッサはスパイへと復帰する決心をする。しかしレベッカとセシルを巻き込まざるを得なくなり...。

指で擦ると微かに映像と関係のあるにおいがする、合計8回の"におい"体験。もう少し強くにおってもいいと思うが、残り香が若干心配な物もあるので、このぐらいが妥当か。凝ったギミックではないものの、ただでさえイベント性のある映画だし、友達同士や子供と一緒に家族で観にいくと楽しく盛り上がるかも。

こういうギミックは面白いと思うのだが、映画自体は、オトナには物足りない。シリーズ1作目から10年、監督はひたすら子供と家族が楽しめる演出に徹底しているからなのか、最新作ではさらにそれが加速。スパイ・ガジェットを駆使して活躍する子供達やおバカなジョーク満載の、勧善懲悪でわかりやすいストーリー。それはそれでもちろん良いと思うが、シリーズ初期の頃にあった、子供っぽくはあるがクールでシニカルな笑いを伴う、新鮮な洗練はない。現代の複雑なオトナの事情、たとえば再婚相手と子供が馴染まないとか、働くママ・スパイの大変さや、多忙な時代に"時間"という最も大事なものを奪う悪党を退治する等々、面白い要素も盛り込んではいるが、監督のキレ味を知っているだけに全体としてはちょっと何か足りない感じ。

だからこそロドリゲス監督らしいキャストにはほっとする。エキゾチックでセクシーなジェシカ・アルバに加え、個性的な実力派俳優ジェレミー・ピヴェン、意外なところではしゃべるスパイロボット犬・アルゴノートの声を担当したイギリス出身のコメディアン、リッキー・ジャーヴェイス、それにロドリゲス映画の常連ダニー・トレホなども出演。それに今回はシリーズ3作目まで主役を演じていたカルメンとジュニの姉弟も登場する。

監督、脚本、製作、音楽、撮影の5役をこなし、3Dに"におい"のディメンションを組み込んだ4D映画を世に送り出したロバート・ロドリゲス。クリエイターであり、プロデューサーであり、さらにマーケッターであることが個人的には最も興味がある。作るだけでなく、ターゲットをかなり意識し、映画を観てもらう環境も"体験"としてパッケージ化し、売り出してしまうというマーケティング的発想。自分の生み出したシリーズであるからこそできるのだと思うが、映画製作の業務があんなに細分化されているハリウッドでこれだけのことを自分でコントロールするのは並大抵のことではないだろうし、新しいことに挑戦し続け「作家性」を守っていくことに貪欲なことは、子供向け映画であろうがなんだろうが、やはり賞賛に値する。

9月17日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー
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