ポール・マッカートニーの9・11ドキュメンタリー、トロント国際映画祭で上映される

9・11同時多発テロの10周年を記念して、様々な催しや作品ドキュメンタリーが製作されていることだろう。あるものは感傷的、あるものは愛国主義的で、強硬な姿勢のものであったり...。だが、恐らく9日にトロント国際映画祭でプレミア公開された、ポール・マッカートニーのドキュメンタリー『The Love We Make』ほど、ソリッドさとエモーショナルさの微細なバランスを兼ね備えた作品は少ないだろう。

「コンサート・フォー・ニューヨーク・シティ」と題されたコンサートの準備のために奔走するポールの姿を追うこの作品は、傷つき失われた"愛"を象徴するかのように、色を失った白黒の映像で描かれている(TVで放映されたインタビューやライブフッテージはカラー)。それはスーパースターが超豪華なベネフィット・コンサートを企画している姿というよりは、悲劇に深く影響されてしまった1人の人間が、自分にできることをしようと思いながらも、それと同時に起こる目の前の全てに対処しなければならなくなったという複雑な状況を描いたもので、人間味溢れるポールの姿をあぶり出した作品と言えるだろう。

映画の後半部では、ポールと監督のアルバート・メイズルスが、コンサートの楽屋裏で出演者や関係者達と交流する姿が映し出され、映画の空気が非常にカジュアルで親密さに満ちたものになる。あるシーンでは、マッカートニー・バンドのメンバーがポールにJay-ZのキャラクターJ-Hovaを説明しようとしたり、娘のステラ・マッカートニーは、渋々父にボンジョヴィのファンであることを告白させられたことを話したり、ビル・クリントンはジェイムス・テイラーとポールと、この世代の衰えない影響力について立ち話したり。

しかしここに集まった誰もが、悲しい現実のためにその場にいるという事実からは逃れられないことを知っている。次第にスター達は事件が起こったときにどこにいて、何を考えていたのか、それが今後のアメリカに何をもたらすのか話し合う。クリントンもジョークを言いながらも、次第に避けられない話題へと会話を移していく。元ニューヨークの消防士だったスティーヴ・ブシェミは、マッカートニーとともに部屋のテレビでコンサートの模様をただじっと、呪われてしまったかのような痛ましい目つきで眺めていた。

全てのシーンが9・11にまつわるあらゆる感情、恐怖、痛み、混乱、怒り、そして微かな希望と愛をそっと映し出しているように見える。『The Love We Make』は純正な事件のドキュメンタリーとは言えなくとも、未来の世代に当時の人々が何を感じていたのかを、伝えるための最良の作品なのかもしれない。 
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