宿命を背負うチンパンジー、人間の未来は?!「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」

とにかく早く誰かにこの興奮を伝えたかった!正直、今年これまでに観たハリウッド大作の中で、最も面白かった作品。本国の興行成績はシリーズ歴代最高記録を達成したし、中身の評判がいいのも知っていたので期待はしていたが、その期待以上の出来だ。第1作目の「猿の惑星」(1968年)は衝撃的なデビューを飾り、映画史だけでなく1960年代以降のポップカルチャーにも多大な影響を与えた不滅の名作。その後のシリーズ作品は玉石混合だが、この最新作はシリーズの"起源"に迫り、暫くぶりに多くの観客にもウケが良く、且つ長年のファンの期待に応えるクオリティだと思う。

サンフランシスコにある製薬会社の研究所に勤務する神経科学者ウィル(ジェームス・フランコ)は、アルツハイマー病の新薬を開発していた。新薬を投与された実験用のチンパンジーの1匹が驚くべき知能を発揮。ウィル達はこの結果を発表するが、突然そのチンパンジーが暴れだし、警備員に射殺されてしまう。ウィルは所長からプロジェクト中止を言い渡されるも、殺されたチンパンジーの生まれたばかりの赤ん坊を密かに自宅に連れ帰り、シーザーと名づけ育てる。同居するアルツハイマー病を患う父親チャールズ(ジョン・リスゴー)の為にも密かに研究を続けるウィル。いつしかシーザーとは人間の親子のような強い絆が生まれていた。やがて母親から類稀な「知性」を受け継いだシーザーは自我に目覚める。ウィルは新薬が脳を活性化させると確信し、ある行動に出るが...。

このシーザーが、ウィルと父と子のような関係を育み、家族の一員としてチャールズを守り、ある出来事によって自分のルーツを意識し、後に種族のリーダーとなって行く様子にかなり感情移入し、人間の身勝手さで宿命を負わされた男の(いや、チンパンジーの)ヒーロー・ストーリーに興奮と愛情、なぜか物悲しさを覚える。頂いた資料によると、人間とチンパンジーの全遺伝情報は約1.2%の違いしかなく、体や脳の仕組みも似ているそうで、人間は98.8%までチンパンジーだといえるのだそう。映画の話にさらに真実味が増す。

シーザーの存在にさらに真実味を増すのは、「アバター」や「ロード・オブ・ザ・リング」でおなじみのWETAデジタル社のパフォーマンス・キャプチャーという手法と、この手法を最大限に生かす術を知る俳優、アンディ・サーキスとの最強のコラボレーション。シーザーは着ぐるみでも特殊メイクでもなく、CGキャラクターだとわかっていても驚きが止まない。最先端技術を駆使しつつ、日常の些細な人間との瞬間を大切に演出しているので、より愛情が沸く。一方、ジェームス・フランコや、恋人で獣医役のフリーダ・ピントは、才能に溢れた俳優達だけに、この映画では及第点の演技に終わった感がある。が、父親役のジョン・リスゴーは、話の構成上、要でもあるし、非常に印象に残る。

クライマックスには避けては通れない類人猿と人間の争いが。ここに至るまでの盛り上げ方もペース良く、また決戦のシーン自体の作りこみが戦術的にも創造性に富んでいてかなり見ごたえがある。決戦に挑む前にこんなシーンがある。サンフランシスコの丘の上に立つシーザーと仲間達の背中を下からカメラがパンしていき、トップに行ったところで、ゴールデンゲートブリッジとその先にある自分達の故郷に似た森を遥かに臨むカット。この挿入のタイミングといい、もう秀逸。巧みな緩急をつけたこの映画の最も印象的なシーンの1つだと思う。

この映画を観る際は、"え?猿がこんなことするの?"とかいったツッコミは一切忘れて欲しい。確かにハリウッドらしい都合主義もあるものの、それはそれ。どうぞシニカルに観たりせずに楽しんで欲しい。

物語は、私利私欲に走る傲慢な人間社会への批判を基盤に、動物の臨床実験と動物愛護、市場原理による新薬開発の功罪など、様々な問題を提起している。その姿勢はシリーズ第1作目から続く本質的部分で、楽しく映画を見ながらも肝に銘じておかないといけない。次の作品が待ち遠しい。

10月7日(金)TOHOシネマズ日劇 他全国TOHOシネマズにてロードショー
配給:20世紀フォックス映画
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