ジョニデxウェスタンxフルCGアニメの冒険活劇:「ランゴ」

ジョニー・デップが主役のカメレオン・ランゴの声を担当し、「パイレーツ・オブ・カリビアン」のゴア・ヴァービンスキーが初めてアニメーションを監督したという西部劇/ウェスタン風味の作品。超大物の組み合わせなのでハリウッド大作の華々しい印象があったが、どことなく小さな映画のスピリットも漂い、なかなか一言で言い表せない不思議な映画だ。楽しさ満載だが風変わりで、独特のスタイルがある。キモカワイくて、皮肉やウィットやユーモアに溢れている。でも締めでは正義と愛を忘れない。意外とオトナ向きで、映画通も納得のアニメーション作品である。
アメリカ西部のハイウェイを走る車から突然、灼熱の砂漠に投げ出されてしまったペットのカメレオン、ランゴ(声:ジョニー・デップ)。「一日歩けば町に着く」と案内役のアルマジロに教えられた彼は、様々な危険にあいながらも、ダートタウンに辿り着く。町は殺伐としていて、住人達はよそ者のランゴを好奇の目で眺める。そんな彼らにランゴは、自分は西部から来たヒーローだとウソをつき、偶然にも銃弾で悪者を倒してしまう。皆はランゴをヒーローに祭り上げ、カメの町長により保安官に任命される。一方、町には毎週水曜日に巨大な水道から水が供給されるのだが、最近はなぜかストップしており、水銀行からは最後の水が盗まれてしまう。保安官のランゴは、マメータ(声:アイラ・フィッシャー)やプリシラ(声:アビゲイル・ブレスリン)を含む住人たちと自警団を結成し水を取り戻しに行くのだが、実は壮大な陰謀が彼を待ち構えていた。

話は実は奥深い。西部劇を土台に、ヒーローに憧れるお調子者のペットのカメレオンが、急に外界に放り出され、様々な経験を通して"Who am I? "(自分は何者なのか?) を自問し続け、自己の存在について悩む哲学的なストーリーライン。指でテレビ画面のようなフレームをなぞり、"Nobody can walk out of their own stories"(自分自身の物語を越えることは誰もできない)みたいな運命論的セリフもあったりと、変幻自在に色を変えるカメレオンが、最後には自分だけの「色」を見つけたりと、何気なさそうでオトナにも刺さる内容だ。舞台の砂漠の乾燥した空気のようにドライなユーモアを交え、シンプルな言葉選びだが本質を突くような凝った意味あいのセリフや話の流れは、オトナが観ても十分楽しめる。

そんなストーリーやキャラとジョニー・デップの相性は絶妙に良く、実写でこんな役を演じるのも想像に難くない。ちなみにこの作品も昨今の流れかエモーション・キャプチャーで製作されていて、担当したのが、あのジョージ・ルーカスが設立したILM社。意外で驚いたがILMは本格的なアニメーション作品は初めてだそう。かなり個人的だが、メキシコに近いアメリカ西部の土地や砂漠や文化、そこに住む動物が大好きなので、それらがILMのお陰で、こんなふうにシュールでハイパー・リアルな映像に表現できるのかとかなりハマってしまった。リアルといえば、カメレオンのランゴは、キュートだけれどクロースアップの質感がリアルすぎたりもするので爬虫類の苦手な方はちょっと覚悟を...。

全編通して、映画通にはたまらない昔の映画へのオマージュに溢れていて、マカロニ・ウェスタンや、「チャイナタウン」「スターウォーズ」など名作からのインスピレーションが楽しい。なかなか秀逸なのが、コウモリの空爆のシーンで、あの「地獄の黙示録」の"ワルキューレ"がバンジョーで演奏されていたりする。そういうネタに気がつけば気がつくほど映画ファンとしては心を擽られる。

西部劇はあまりなじみがないが、近年、SFやアニメやインディペンデント映画など、あらゆる角度からこのジャンルが再発見され、新しい解釈で世に送り出されている。そうやって西部劇が新しい観客層を開拓すると同時に、「ランゴ」のようなフルCGのアニメ映画も積極的に新しいオトナの層に訴求していく。アニメーションに対してかなり目の肥えた日本の観客がどう評価するかが楽しみだ。

10月22日(土)新宿バルト9他全国ロードショー!
「ランゴ」公式サイト
http://www.rango.jp/
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