繰り返す8分間の任務の後には、まさかのラスト!「ミッション:8ミニッツ」

"映画通ほどダマされる"というキャッチコピーが気になる本作。全米公開後、批評家達が挙って大絶賛していたし、映画関連の友人達からもその好評を聞いていた。監督は「月に囚われて」で鮮烈なデビューを果たしたダンカン・ジョーンズ(デビッド・ボウイの息子ももう40歳...)。新進気鋭の脚本家ベン・リプリーがアイデアを創案し、「2012」「プライベート・ライアン」などを手がけた大物プロデューサーのマーク・ゴードンが製作、そしてインディ映画から大作まで幅広く活躍する愛らしいイケメン、ジェイク・ギレンホールが主役という、鬼才とエンタテイメントの巧い融合が楽しみな布陣。
ある朝、シカゴの中心部を目指す一台の列車に、コルター・スティーヴンス(ジェイク・ギレンホール)が、困惑した様子で座っていた。目の前にはクリスティーナ(ミシェル・モナハン)と名乗る魅力的な女性が座っていて、コルターに話しかけてくる。が、彼には彼女が誰なのかさっぱりわからない。まるでコルターは不条理な悪夢を彷徨っているようだった。彼は米国陸軍の大尉で、今頃はアフガニスタンで戦闘ヘリコプターを操縦しているはずなのだ。洗面所に行き鏡を見ると、見知らぬ男の顔が映り、さらに混乱するコルター。すると車内で凄まじい大爆発が発生し、コルターもクリスティーナも爆風と炎に飲み込まれてしまう。その後、コルターは薄暗いコックピットのような密室で意識を取り戻す。モニターには空軍大尉のグッドウィン(ヴェラ・ファーミガ)が映り、列車を爆破した犯人は誰なのかを彼に尋ねる。状況が全く理解できないコルターに、グッドウィンは、もう一度電車に戻り、仕掛けかれた爆弾を8分間で探せと指令を下すのだった...。

なるほど。アイデアが非常に斬新でかなり凝っているが、凝った技法に溺れることなく純粋に面白い。結末が全く予想できずにどんどん引き込まれ、1時間33分の上映時間はあっという間。

原題は「Source Code(ソース・コード)」で、現実とそっくりなパラレル・ユニバースの8分間にアクセスできるプログラムの名前。コルターは、このプログラムによって、列車爆破事故の犠牲者の絶命寸前8分間の意識に何度もアクセスし、次に起こると予告されたテロを防ぐ任務を与えられる。一方で現実の彼には予想だにしないことが起こっている。彼はパラレルワールドで経験した悪夢を変えたいと試みるが、それができない。その矛盾やジレンマがこのストーリーの要だ。「インセプション」ほど複雑ではないが、観ている現時点での時間軸をしっかり認識しておかないと混乱することもある。

この同じ8分間を何度も繰り返すループという手法は、目新しくはないが、"8分間"と時間を区切ったことで、ストーリーにより緊張感が生まれ、観る側を刺激する。加えて"列車"という舞台装置もまた、よりテンションを高めている。疾走する閉ざされた空間で、偶然居合わせた乗客達とのやり取りが密室劇を思わせ、個人的には最初の列車のシーンあたりで、ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」を思い出した。密室と疾走感。この静と動の緊張感を巧みに生み出す"列車"という装置がさらにダイナミックな興奮を付加している。

映画らしい凝った技法を駆使してはいるものの、主軸は愛する人を含む大勢の罪なき人達を救う為のミッションを与えられた男のストーリーであり、映画通でも映画通でなくても納得の快作。驚きのラストまで気が抜けない、この秋オススメの作品だ。

10月28日(金)全国ロードショー
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