世界各地の賞レースを沸かせた秀作。感涙必至の「ウィンターズ・ボーン」

第83回アカデミー賞の作品賞等にノミネートされ、インディペンデント映画の最高峰サンダンス映画祭ではグランプリ&脚本賞の2冠に輝き、その後も世界中の映画祭において約46部門もの賞を獲得したという話題のヒューマンドラマ。主演は新星ジェニファー・ローレンスで、21歳の若さでアカデミー主演女優賞にノミネートされた。私事で恐縮だが、以前サンダンスでインターンやアルバイトをしていたこともあり、あの人達のお墨付きならハズレがあるわけがないと、期待大で試写を拝見。
ミズーリ州南部のオザーク山脈に住む少女リー・ドリー(ジェニファー・ローレンス)は、一家の大黒柱として幼い弟と妹の世話をし、その日暮らしの生活を何とか切り盛りしていた。ドラッグ・ディーラーの父・ジェサップは長らく不在で、辛い現実に耐えかね心を病んでしまった母親は言葉を発することができない。生活資金が尽きようとしている時、保安官がやってきて衝撃の事実をリーに突きつける。懲役刑を宣告されている父が自宅と土地を保釈金の担保にして失踪し、翌朝までに父が出廷しなかったら、リーたちの家が没収されるというのだ。リーは自分が絶対父を見つけ出すといい、何らかの手がかりをつかもうと親族や知人を訪ねる。しかし薬漬けの伯父・ティアドロップ(ジョン・ホークス)をはじめ、皆がリーを冷たく突き放す。父親の失踪への過剰な村人達の反応に彼女は不信感を抱く。懸命に父を探すが、リーには恐るべき試練が待ち受けているのだった。

静寂で繊細、且つ粗野で残酷。ストーリー自体はシンプルだが、サスペンスの要素もあり、最後まで飽きない。号泣が止まず、心の奥底にある何かを掴まれるような映画だった。17歳のリーが、貧しくも気高く、賢く、家族を思い、諦めずに父を探す。その姿に感動しない人などいるだろうか?ああ、もう原稿を書くだけで泣けてくる。

凛々しい輝きを魅せるジェニファー・ローレンスの演技は、同世代達の俳優たちの中でも群を抜いており、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」のミスティーク役と同じ人物とは到底思えない。ティアドロップを演じたジョン・ホークスもアカデミー賞助演男優賞にノミネートされていたが、それに相応しい鬼気迫る演技。

日本人にとって、ミズーリ州南部の貧しい話など馴染みがないかもしれない。そこは皆が貧しさから抜け出したくても抜け出せず、甘い麻薬の誘惑が蔓延る場所で、過疎化が進み、親類縁者が肩を寄せ合って暮らす。隔離されたムラ社会だからこそ掟も厳しく、それに叛いた者には容赦がない。監督のデブラ・グラニックは、そんなリアリティを最優先する為、全て現地で撮影し、現地住民と俳優とを混ぜてキャスティングしたとのこと。不毛の大地に暮らす人々の現実を淡々と描き、その中で決して屈しない少女の成長を記録するかのようなスタイルは非常に好感が持てる。「フローズン・リバー」や「プレシャス」といった、貧しくも人生を諦めない女性を描く映画に通じるものがある。監督は映画製作の名門、ニューヨーク大学大学院映画学科で学び、サンダンス・インスティテュートの脚本家&監督ラボに参加していたという、いわゆる筋金入りのインディ映画派。個人的にこういう映画を最も好むだけに、今後も監督を応援したい。

経済の疲弊が著しいアメリカの中で、その被害を最も深刻に受ける地方貧困層の現実。衝撃の結末が待っているが、どうぞ目を逸らさずに。ミニシアター系でこの秋じっくりと映画を観たい人には超オススメの作品だ。


10月29日(土)、TOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
上映時間:100分
配給:ブロードメディア・スタジオ
公式HP:www.wintersbone.jp
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