ブラピ、アカデミー賞へまっしぐら?野球界の常識に挑戦するGMを熱演:「マネーボール」

メジャーリーグの万年下位チーム、オーランド・アスレチックスを常勝軍団に作り変えたゼネラル・マネージャー(GM)のビリー・ビーン。松井秀喜選手も獲得したGMだが「マネーボール理論」という型破りな方法で野球界を変えようとした男の半生を、ブラット・ピット主演、「ソーシャル・ネットワーク」でアカデミー賞受賞の脚本家アーロン・ソーキン、「カポーティ」で同賞ノミネートの監督ベネット・ミラーなどで映画化した作品。本国興行収入も好成績の上に、辛口批評家たちも大絶賛。アカデミー賞の呼び声も高い話題作だ。
ビリー・ビーン(ブラッド・ピット)は、高校卒業後にニューヨーク・メッツに入団したが、予想に反して低迷の日々を送っていた。ついに弱小球団オークランド・アスレチックスで、約10年のプロ生活に終止符を打ち、自らスカウトマンに。数年後、若きGMとなったが、貧乏チームの低迷は続き、ワールド・チャンピオンは夢のまた夢だった。ある日、野球経験のないイェール大学卒のピーター・ブランド(ジョナ・ヒル)と出会い、選手のデータを分析し低予算で強いチームを作る"マネーボール理論"を実践していく。だが、それは古いスカウトマン達だけでなく、選手やアート・ハウ監督(フィリップ・シーモア・ホフマン)らの反発を生み、チームの状況は悪化。それでもビリーは揺ぎない信念と情熱で少しずつチームを動かし、勝利をもたらしていく。同時にビリーは心の奥底に眠っていた自身の問題と戦うこととなる。

間違いなくアカデミー賞やゴールデン・グローブ賞などにノミネートされまくるだろう傑作。134分と野球の試合のように長い作品だが、野球に詳しくない私でも最後まで十分楽しめたのは、ストーリー展開の面白さと、ブラピの演技とジョナ・ヒルの存在に尽きる。

ストーリーの構成力がさすがで、セリフやペース配分がよく練られている。最初から登場人物のキャラをどーんと見せるのでなく、小さなエピソードを丹念に重ねて少しずつ描写しながら話が進むのが良い。選手人生において自分の選択が正しかったのかと常に悩み、トラウマを払拭しようともがいてきた人生。結婚生活も崩壊し、一人娘と会う時だけが心休まる時間。そんなビリーの人間性を丁寧に描くので、感情移入しやすい。また、長年の経験と勘を元にスター選手の獲得に躍起になるベテランのスカウトマンと、出塁率などのデータが良ければ地味な選手でも選びチーム戦略を練るビリー達との軋轢は、我々の実生活でも見られる新旧の戦いだけに、観るのにより熱が入る。

年をとればとるほど素晴らしいブラピ。もうすぐ48歳とは思えないぐらい美しくて凛々しい。若い時はどうも背伸びしている気がしてならなかったが、年齢と経験と役柄がマッチしてきたように思う。奇をてらった役よりも、今回のような着実な演技を要求される役がしっくり来るし、これからが実に楽しみ。このブラピをより光らせていたのが、ジョナ・ヒル。おバカなコメディの常連の印象が強かったが、この肥満気味のエリート、ピーターが彼のおかげである意味賢く個性的な存在に。話の"てこ"のような役割で、この二人の間に科学反応が起きて、どんどん面白くなる。

年末に向け、賞レースにどういう顔ぶれが並ぶか噂が出始めているが、本作品もしくはブラピが有力な候補になるのでは?と勝手に思ったりする。ここのところ"オススメ"とばかり書いているが、これも心からオススメしたい作品。(★★★★☆)

-アメリカの著名な映画情報・批評まとめサイト「ロッテン・トマト」では:95点

配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
http://www.Moneyball.jp
11月11日(金)より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
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