トッド・ラングレンが語る「現代のポップ・ミュージック」とは

40年以上にわたり、音楽界で最も野心的で印象的、かつ予測不可能なキャリアを築いてきたトッド・ラングレン。ミュージシャンであり、ソングライターであり、パフォーマーである彼は、それだけでなく、同世代の中でも最も成功したプロデューサーとしても知られている。バッドフィンガーから、ニューヨーク・ドールズ、パティ・スミス・グループ、グランド・ファンク・レイルロード、XTC、ミート・ローフと、幅広いアーティストを手掛けてきた彼が、このたびその集大成ともいえるアルバム「(re)Production」を9月にリリースした。これまでにプロデュースしたアーティストの楽曲を、テクノ/ダンス・ポップ風に"再生"した作品集だ。

そんなトッドに、<Spinner.com>が今回のアルバムのユニークなコンセプトや、現代のポップ・ミュージック、そしてプロデューサーの役割について話を聞いた。

Spinner.com(以下、S): アルバム「(re)Production」のコンセプトを思いついたきっかけは?
インディアナ大学で教授職に就いていたときに、学生たちと音楽に関してディスカッションしてね。ある学生が、今日の音楽が置かれた状況を嘆いていたんだ。この先、音楽はいったいどうなってしまうんだろうってね。音楽に深みはあるのか、未来のリスナーたちを感動させることはできるのだろうかと。そのとき我々は、レディー・ガガについて論じた。彼女がちょうど絶頂期を迎えていたからね。かつてはマドンナがそのポジションにいたが、もう過去の話だ。それもこれも、彼女の音楽がお粗末だったからさ。

すると私はこの学生から反発をくらった。今の音楽シーンにも、聴くに値する作品はあるというわけだ。確かに私は今の時代の音楽を、それほど時間を割いて聴いてはいなかった。だから私は今回のサウンドを、コンテンポラリーなものにしようと考えたんだ。現代はダンス・ミュージックが主流だろう?

そもそも、今回のアルバムで取り入れたダンス・スタイルは、若いオーディエンスとのこうしたディスカッションから生まれたものなんだ。私は自分の知っているものだけを基に憶測を立てていたことに気付いたんだよ。そして、私の知らない音楽もたくさんあるという事実にも。

S: 今回のアルバムの選曲において、苦労した点は?
我々が最初に取り掛かったのが、曲目を考えることだった。何が難題かって、作品のアプローチをどうするかという点だね。これらの曲をどうにか1つにまとめなくちゃならないわけだからさ。それに、ダンス・ミュージックを意味ありげなところにまで昇華させる必要があったんだ。

ポップ/ダンス風にアレンジしてみると、自分が作った曲の中でも、それにうまく馴染まないものがあることに気付いた。サイケデリック・ファーズ(トッドがプロデュースしたニューウェイヴ・バンド)の曲は概ね、このアレンジに向いていると言えるだろうね。音楽のスタイルがシンプルで、別のスタイルに変えやすいからさ。自分がプロデュースした彼らの曲の中から「Love My Way」を選んだのも、そういう理由だ。我々が選んだ曲はいずれも、ある種のシンプルさを共有しているんだ。

S: この最新のスタイルで、これらの曲をパフォーマンスする可能性はありますか?
この作品自体が1つの形になれば、たぶんそれもありだろうけど、今のところはこのアルバムでツアーをするつもりはないし、この作品を目当てにオーディエンスが来ないようなら、そういうプロモーションもするつもりはない。我々のファンから、そういう人間が出てくるとは思えないしね。もともと、突然ダンスフロアに飛び出していって、踊り出すようなタイプじゃないと思うんだ(笑)。みんな年をとってきてるしね。1曲か2曲踊ったら、3曲目は休まないとやってられないだろ!

S: 1970年代、あなたはプロデューサーとしてもアーティスト並みの注目を集めるようになりましたが、それ以降、プロデューサーの役割はどのように変化したと思いますか?
今も変わらず何らかの意味はあると思うけど、以前とは違うよね。いまだに(ブラック・アイド・ピーズの)ウィル・アイ・アムを(プロデューサーとして)自分の作品に迎えたがったり、彼の名前だけでもクレジットに載せたがる。ホットな人物だからという理由でね。

以前と何が違うかって、リアーナやケイティ・ペリー、ニーヨといったアーティストのクレジットを見ればわかるように、プロデューサーが1人じゃないんだ。1曲に3人のプロデューサーが関わっていたりするんだよ! アルバム1枚でプロデューサーが20人なんてこともね(笑)。つまり、アーティストとプロデューサーの絆が以前ほど密ではないってことさ。今やアルバム作りっていうのは、高度な科学のようになってしまった。高い専門性を持った人間が呼ばれるんだ。アーティストとプロデューサーの密な関係など、もはや存在しない。作品もそのように変化しているからね。

私がこれまでに手掛けた作品の多くには、実際にソングライターがいて、楽曲も極めて個人的な内容のものだった。だから、ソングライターが楽曲に込めた思いと、オーディエンスがその楽曲を聴いたときに感じる思いの橋渡しをする必要があったんだ。それが今日では、楽曲は完全にオーディエンス向けに書かれている。「オーディエンスがどんなものを気に入るのか、我々にはもうわかっている。ならばそれを作ろうじゃないか!」という具合にね。今や多くのポップ・ミュージックには、(ソングライターの)個人的な深いメッセージなど存在していないのさ。お互いを出し抜くってことしか考えていないのさ。

トッド・ラングレン、アルバム「reProductions」のレコーディングの様子
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