久々に100% 童心に返る。「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」

全世界で2億5000万部発行されているベルギー生まれの人気コミックを原作とした「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」。スティーヴン・スピルバーグ、3年半ぶりの監督作品となり、「ロード・オブ・ザ・リング」のピーター・ジャクソンが製作を担当。フルデジタル3Dパフォーマンス・キャプチャーという最新技術を用いているが、意外にも二人とも3D作品は初めてなのだとか。超一流の才能がタッグを組んだというだけに期待もかなり高く、10月22日にタンタンの母国ベルギーでのワールド・プレミアの後、10月28日にヨーロッパで封切られ、各国で1位を獲得。作品の中身も目の肥えたヨーロッパの観客・批評家達から絶賛されている。日本は12月1日公開で、アメリカ公開はクリスマス真近の12月21日。世界を凱旋した後にアメリカへ、というわけだ。先日、東京での完成披露試写会にお邪魔したが、会場内は超満員で日本でも注目度の高さが伺えた。
記者のタンタン(ジェイミー・ベル)は相棒の白い犬スノーウィと共に街を歩いていると、露店でユニコーン号という船の模型を見つけ、手に入れる。するとすぐに怪しい2人の男から高額で売ってくれと迫られ、調べるとそれは海賊の襲撃に会い忽然と消えた伝説の軍艦の模型だった。財宝を積んでいたと噂される船の謎を解いた者はいない。さらなる調査の結果、怪しい男達の1人はユニコーン号の第2の模型を持つサッカリン(ダニエル・クレイグ)とわかったが、後にタンタンは彼に拉致され、気づくと海の上にいた。そこで酔っ払いのハドック(アンディ・サーキス)と出会う。ハドックはユニコーン号の最後の船長の子孫だった。タンタンとハドックは様々な災難に会いながらもユニコーン号の謎を解き明かそうとするが、そこにはサッカリンとの宿命の対決が待っていた。

日本人にも馴染みのあるコミックだが、タンタンというキャラクターは知っていたものの、その物語の内容までは知らなかったので、こんなにもスリリングな冒険譚だとは思わず正直びっくりした。スーパーパワーを備えていない普通の記者とはいえ、さながら007かインディー・ジョーンズのようで、明晰な頭脳で謎を解き明かし、抜群の運動神経で敵をかわし、銃も扱い、ヨーロッパやモロッコを飛び回るという八面六臂の活躍だ。

わかりやすいストーリーゆえ、ファミリー向けではあるけれど、どんな年齢層の観客も子供の頃に帰って楽しめるエンタテイメントだと思う。通常なら、主役の内面が見えずに感情移入できないとか、もう少し凝ったプロットがあればとか言いたいのだが、そんな小難しい批評も超越する、素直な楽しさがある。若干テーマパークっぽくもあり、大きな感動を与えるといった類の作品でもない。それにアートシネマ好きの私なら見ないタイプの映画だけれど、暗い浮世を忘れ、思う存分この映画の世界に浸りたいと思えた。

技術的に卓越しているのは言わずもがなだが、その映像的なセンスがさすが。アドベンチャーシーンの手に汗握る迫力もさることながら、実はとても細かく繊細な部分に力をいれていることがよくわかる。どこか懐かしさを思わせるクラシックなトーン、バラエティ豊かなキャラクターの表情や動き。技術先行の美しい絵図だけではない、"新しい体験"を約束する力があり、3D&パフォーマンス・キャプチャーの可能性を感じる。

すでに3部作として予定されている「タンタン」。シリーズものとして大ヒットの予感がする1作目だ。(★★★1/2☆)
-アメリカの著名な映画情報・批評まとめサイト「ロッテン・トマト」では:86点

12月1日(木)TOHOシネマズ スカラ座ほか全国ロードショー
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