本性、剥き出し。自称"知的"な親達の舌戦に、苦笑止まず:「おとなのけんか」

他愛無い出来事が、意外な言い争いになることってよくある。黙っていればいいのに、つい口に出してしまい、それが新たな口げんかの火種に。結果、表面的な人間関係が壊れていくという...。そんな人間模様を描いて演劇界のアカデミー賞に輝いた舞台劇を、巨匠ロマン・ポランスキーが映画化。この作品で本年度ゴールデン・グローブ賞ミュージカル・コメディ部門の主演女優賞にノミネートされたジョディ・フォスターとケイト・ウィンスレット、男優陣はクリストフ・ヴァルツにジョン・C・ライリーという賞レース常連の演技派達も集結した。79分の上映時間に濃厚な密室劇がリアルタイムで進行していくという意欲作だ。
弁護士のアラン・カウアン(クリストフ・ヴァルツ)と妻で投資ブローカーのナンシー(ケイト・ウィンスレット)は、息子のザッカリーがけんかの最中に友達のイーサンの前歯を二本折る怪我を負わせてしまい、イーサンの父で金物商のマイケル(ジョン・C・ライリー)とその妻で作家のペネロペ(ジョディ・フォスター)のアパートを訪ね、和解の話し合いをしていた。知的なニューヨーカーを自認する4人はコーヒーとケーキを嗜みながら、和やかに話し合いを進める。ところが、子供を交えた話し合いの日程を決める段階で、彼らの主張は次第にかみ合わなくなり、雰囲気は険悪に。抱える訴訟問題で携帯から離れられないアラン、夫の無関心な態度を非難するナンシー、正論を振りかざしヒステリーになるペネロペ、物分りのいい夫を演じるのは御免だと開き直るマイケル。各々の不満が爆発し、話し合いは収束不可能な状態に陥っていく。

映画の原題は「Carnage」(大虐殺)というだけあって、子供のけんかをきっかけに、親達は超早口セリフで本性むき出しの仁義なきバトルを展開する。「ここでやめときゃいいのに」とか「早く家から出て行きゃいいのに」などと思わず口走ってしまうぐらい、本気の舌戦だ。言い争いを好まない日本人の私にとっては若干違和感を覚えたが、いい歳をした大人たちがバカバカしいぐらい真剣で、苦笑止まず。舞台ではなく映画での密室劇ゆえ、カメラワークと演技が勝負となるが、飽きることがなかった。この部屋の張り詰めた雰囲気や後半登場する"あるものの匂い"までも観客席まで漂ってきそう。争いの中にも妥協、交渉、懐柔、合意などが頻発し、そのタイミングも絶妙。こういうことって、仕事の打ち合わせから、国家間の大会議まで、実はわりとありふれた光景かも。リハーサルを十分に重ねたとのことで、小さな作品だが、練達の名匠と玄人ウケする役者達、そしてそのケミストリーが見事に調和した大人の映画だ。(★★★☆☆)

-アメリカの著名な映画情報・批評まとめサイト「ロッテン・トマト」では:72点

2月18日(土)TOHOシネマズ シャンテ他 全国順次ロードショー。
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