「戦火の馬」:スピルバーグが"運命的な出会い。" そして情熱をかけた映画化。

既に国際的に有名だった同名小説の舞台を2010年1月にロンドンで観たスティーヴン・スピルバーグが、あまりの感動に"スピルバーグ組"の製作、撮影、音楽スタッフなどを集結させ、なんと7ヶ月間で撮影に突入したというこの映画。米国では2011年12月の公開なので、驚くべき機動力だ。当然といえば当然だが、結果、本年度アカデミー賞で作品賞他6部門にノミネート。賞を狙おうと思って製作したわけではないだろうが、アカデミー賞への意気込みと映画化にに対する尋常ではない熱意が伝わってくる壮大な映画だ。

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第1次世界大戦前夜のイギリス。農村の少年アルバート(ジェレミー・アーヴァイン)は父がセリで落としたサラブレッドの血を引く美しい仔馬をジョーイと名づけ、農耕馬として育てる。少年と馬には固い絆が芽生えるが、父は家族を飢えさせぬ為、ジョーイを軍馬として売ってしまう。アルバートは陸軍大尉のニコルズに懇願するも、ジョーイは出征。その後、ニコルズ大尉が騎乗する騎兵隊の馬となったジョーイは、その俊足で他を圧倒。大尉と共に前線に送られるが、ジョーイには戦時下の人間達の切なくも美しいドラマと共に、数奇な運命が待っていた。

しっかりと骨太で、老若男女楽しめて、グッドスピリットに溢れるスピルバーグらしい映画ではある。美しい馬が主役の5部構成のストーリーだが、エミリー・ワトソンなど芸達者が脇を固めるも、いわゆる"スター俳優"がいない。なので、どれだけこの馬・ジョーイを軸に、観客を飽きさせずに最初から最後まで引っ張っていくかがミソ。その点でみると、馬に焦点を当て過ぎて、各々の逸話や登場人物にあまり感情移入ができず、飽きることも。またジョーイと別れた後のアルバートのエピソードももっと盛り込んでくれたら、彼のジョーイへの強い拘り、想いがもっと納得できたはず。かたやジョーイは意外な幸運も経験する。"おいおい、そんなことあるわけが..."と数々思えど、ここは戦場。我々の想像を遥かに超えた奇跡があるかもしれない。ありえない、と思いつつも、やっぱり感泣極まる。馬、純粋な少年、戦争という号泣必至の設定を懐疑的に思ってもいたが、やっぱり涙腺が緩む。




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映像は圧巻。「シンドラーのリスト」以降、全てのスピルバーグ監督作品の撮影を手がけているヤヌス・カミンスキーは、この作品でまたも本年度アカデミー賞にノミネート。ジョーイが大草原を駆け抜けたり、戦場で荒れ狂ったように走り捲くるシーンなど、危険なシーンを除いてCGは使用していないらしく、神々しいまでの美しさに感銘を覚える。

本年度のアカデミー賞は異色作もあり競争が激しいので、通常ならこの作品ももっと善戦するはず。でも結果はまだわからない。わかりやすくて、誰もが安心して観れる良心的な作品。(★★★☆☆)

-アメリカの著名な映画情報・批評まとめサイト「ロッテン・トマト」では:77点

2012年3月2日(金)全国ロードショー。


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