東海林さだおに学ぶサラリーマンにとっての緊急事態とは


ジャパニーズ・サラリーマンが、さらに仕事に没頭できるための本、映画などを紹介するコーナーを始める。

まずは連載開始一回目ということで、一家に一冊、職場に一冊必ず常備したい本の紹介から。
その名も「アンソロジー ビール」。

そうサラリーマンにとって一番大切なアイテム、ビール。サラリーマンからビールをのぞいてしまったら、それはチョコレートのないベルギーや、石油のないアラブ首長国連邦と同じだ。
この本には開高健、遠藤周作、吉村昭から角田光代、川上弘美まで41名の諸先輩方のビール愛に溢れるエッセイがおさめられている。コレだけ多彩な方々がビールを論じている時点でビールの持つ魅力の幅広さがわかるわけだが、この中でもビール愛が突出しているのは東海林さだおといえよう
東海林さだおは「まるかじり」シリーズで多くのビール問題を語っているが、このアンソロジーに収録されたエッセイ「生ビールへの道」では、生ビールの最初の一杯にたどり着くまでの苦悩が語られている。

焼き鳥屋に入って、もうあと、二分後には冷たく冷えたビールにありつけると思った瞬間に悲劇が始まる。
「なのね、ぼくはね、生ビール大」、「オレ、中」、「わたしは小でいいです」、「そうするとアレですか。大が4に中が3ですか」、「いや、中が3なんじゃないか?」・・・。
先生はいらいらしはじめる「何ということだ。今は一刻を争う時なのだ。大も小もない」と。こういうときは中を頼むということに昔から決まっているらしい。サラリーマンの皆さんにはスマホの節電法などとならんで、是非覚えておいてもらいたいハックである。
さらに、ビールと焼き鳥問題というものもある。こういう席でビールがくる前に「ボクはツクネ」などと頼む輩が現れるのだ。なんということだ!
その上「じゃあ、5本ぐらいにしとくか」とか「いや、4本でいいよ」・・・。

何度もいうが、ビールを頼む瞬間というのは一刻をあらそうエマージェンシー状況なのである。コレを忘れてはいけない。先生曰くツクネの本数などどうでもいいのだそうだ。焼き鳥の本数は適当に決める。これも覚えておいてもらいたい。
諸先生に学ぶサラリーマンが押さえるべき教訓が多数つまった名著なので一家に一冊常備を勧めたい。

文/嶋浩一郎

シンガポール出張中にビールを飲みながらビールの本を読む
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