「お酒は御馳走してもらうモノ!」ある先輩芸人の"奢られ術"にボクが受けた災難



どうも!「マッハスピード豪速球、『ガン太』」の「どんなときも。」です!!
働いている皆様、しんどいですかー!? 

今回は前回の芸人と酒についてのつづきで、一度だけ酒癖の悪い芸人に巻き込まれたお話しです。彼の名誉もあるのでここでの彼の呼び名はイニシャルで「Jさん」と呼ばせてもらいます。

 
2年ほど前の話です。
その日ボクは知り合いに頼まれた、目黒の居酒屋での営業に来ていました。知り合いから30分何かやってくれと言う依頼を受けていたので、ボクら『マッハスピード豪速球』の他にもう一人くらい芸人が居た方がいいだろうと思い呼んだのがJさんでした。
Jさんはおっちょこちょいでイジりがいもある、見た目もとてもキャラのある芸人なので、先輩から可愛がられるタイプの芸人です。先輩からだけではありません、ひとたび営業などに行くとその親しみやすいキャラからなのか、すぐに皆Jさん、Jさんと近寄ってくるようになります。

この日も人が寄って来て居酒屋の営業と言う事もあって、皆がお酒をご馳走してくれます。
「ありがとうござっます。ありがとうござっます。」と上機嫌で酒を飲むJさん。
まだネタもやっていないのに大丈夫なのか?と心配していると案の定、ネタが始まると顔を真っ赤にし、目を血走らせ、打ち合わせしていた流れもすっかり忘れると言うグダグダな内容でした・・・しかしさすがはJさん憎めないキャラなのか、そんなグダグダな感じさえも皆受け入れて笑いになっていました。

営業ネタ終了後、Jさんは上機嫌になりさらに酒を飲みます。ボクらは自腹で飲んでいるところ、Jさんは依然全部誰かしらに奢って貰っています。
良く観察しているとJさんの"奢られ術"が分かってきました。
それは、"寄ってきた獲物を逃さない"と言う事です。先ほどネタを披露した後なので、酔っぱらっている人たちが「あっ芸人だ!」とか言って絡んできます。ボクはそういうのが苦手で、どうせ酔っぱらい相手にしても今後仕事に繋がったり、後にライブなどに足を運んでくれるわけがないと思い、適当に愛想笑いしながら流しちゃうのですが、Jさんは違います。奢られることに全力をかけるのです。Jさんは「あっ芸人だ!」と来たら相手よりも高いテンションで応戦し、まずは通りがけにちょっと話しかけただけの人の足を完全に止めます。そして持ち前の可愛がられるキャラで、スッとどんなに年下そうな人でも下手に出て懐に飛び込みます。そしてさりげなく「酒が好きなんです」の話に持ってきます。
「酒が好きなんですわーこれが飲めれば幸せなんですわー」「えーじゃあ何かしてくれたらおごるよー」「よっ!!(Jさん一発ギャグ)」これが黄金パターンです!まさに芸人の鏡です。その営業が終わりそのことを告げました。「いや、すごいなJさんの"奢られ術"は!芸人としてカッコイイよ!」

Jさんは酒場の営業が普段から多いらしく、Jさん曰く営業なんて大してお金がもらえないから、酒を飲ませてもらう事にかけるようになった。その能力には自信があると語ってくれました。「いやー素晴らしい芸人魂だ!」何て話していると、もうヘベレケの気分が乗っているJさんは「もう一軒行こう」と言い出しました。「お金が無いんですよねー」と断ると「おれに任せろ。」と言いました。しかしボク以上にJさんはお金が無い事を知っていたので「お金ないじゃないですか」と言うと「おれに任せろ」の一点張りです。しょうがないのでその言葉を信じてJさんと居酒屋に入りました。飲んで食べてしてベロベロに酔ったJさんを見ていると、本当にお金は大丈夫なのか?と心配になります・・・

「Jさん本当に金大丈夫なの?」「任せろって言ってんでしょうよ!」そういうとスッと周りを見渡し始めました・・・その眼は血走り獲物を狙う獣のような目です。そうすると後ろで飲んでいたサラリーマン10人ほどの団体に、突然
「よっ!わたくし芸人やってまして!」とか何とか言いながら、団体の中に入っていきました・・・Jさんはボクに褒められて嬉しかったのでしょう、何とか自分の"奢られ術"でこの場をどうにかするんだと言う気迫が凄いです。しかし、はっきり言ってボクからしたら恥ずかしくてしょうがないです。やめてほしいです。サラリーマンもドン引きしています。そりゃそうです。何とか奢って貰おうという気迫が出すぎてて殺気立ってしまっているし、目が血走ったやつが突然乱入して来たのです・・・営業先ではネタを見ているから皆交友的なのです。このやり方は根本的に間違っている・・・「一発ギャグやります。」もう前ふりもくそもなくやるギャグは空を切りまくります。目が血走ってるやつの一発ギャグほど面白く無い物は無いです・・・そこにはかわいらしさのかけらもないJが居ました。

誰もが"早く居なくなれよ"という空気感を出す中、Jさんは20分くらい居座り戻ってきました。そして小声で「行きましょう」とボクに言い席を立ちます。
外に出ようとすると当然店員が近づいてきました。
「オキャクサマオカイケイハ?」(中華料理の居酒屋)
一瞬一秒くらい間があった瞬間・・サラリーマン団体を指さし早口で「あそこに付けといてください」と言い扉を"ガバ!!"っと開けて走っていきました!!
「オキャクサマ―オキャクサマ!!!」
"ズダダ!""ガバ!!""ガサガサ!!"植木とかを飛び越えてアッと言う間にJさんは見えなくなってしまいました・・
「オキャクサマ―――!」取り残されたボク・・店全体が何事かとこっちを見ています
・・・「いくらですか?・・」当然全額ボクが払う事になりました・・
 
中々嫌な思い出です・・あーやっぱり、芸人もお酒はカッコ良くスマートに飲めたほうがいいかもしれませんね。皆様もお酒とは上手なお付き合いを。

==著者プロフィール==
マッハスピード豪速球・ガン太
1984年生まれ。人間の本質をとらえたコントを得意とす るお笑いコンビのネタ作り担当。オフィス北野・フライデーナイトライブで才能を見出され、2012年1月オフィス北野所属となる。テレビ東京「ゴッドタ ン」の若手芸人対象アンケート『華は無いけど実力はある芸人』で3位と周りの若手芸人からも一目おかれる存在。日本喜劇人協会主催『第一回コント新人大 賞』準優勝。また、水道橋博士の運転手だったことでも有名。
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