北野武監督、「ジジイが面白いのはタチ悪いから。この映画はグラフィティに近い」【後編】


『龍三と七人の子分たち』大ヒット公開記念、北野武監督インタビューの【後編】は、本作に登場する痛快"ジジイ"たちの人間臭い魅力などについて。"ジジイ"たちに特定のモデルはいないけれど、下町で育った北野監督の記憶や想い出の投影があることは確かで、「これはグラフティーに近いんだよね」と監督もおっしゃいました。それと、"ジジイ"が大暴れすると、どうして痛快になるのか!? その理由もお話していただきました!



――この映画の"ジジイ"たちは人間的に魅力的で、北野監督の想い出などが投影されているのですか?

子どものころは近所に大工の棟梁がいて、職人の街で。彼が夫婦喧嘩とかあると仕切ってくれてた。うちの親父は下の方の職人で、柄が悪いところがあって。ヤクザじゃないけど、似てるとこあるからね(笑)。何も知らなかったし、新幹線なんか知らないんで。ある時、職人皆が熱海行くっていう、飲んで温泉入って博打を打ってくる旅行があって、親父は12時頃の新幹線に朝6時頃行っちゃって。ホームで酒飲んで寝て、気づいたら夕方(笑)。東京駅行って帰ってくるだけで、菊ちゃんは来なかったってことがあった。そういう親父はいっぱいいたかなあ。そういうのは、あると思う。

――『TAKESHIS'』(05)で描いていたイメージですよね。

昔なんかは、ひどかった。特にうちのほうは、タクシーが行きたがらない場所だもの(笑)。あと、ヤクザもいた。自分も「てめえたばこ吸ってんだろ!」なんて怒られて、「たばこなんて吸いやがって。オレみたいになるぞ!」なんて、よくわかんない怒りかたされたけど、そういうの。だからけっこう、これはグラフティーに近いんだよね。違うのは、今回の映画は若い奴とのケンカになっているだけで。

――ちなみに実際に北野監督がオレオレ詐欺に遭ったら、どう対処しますか?

自分はけっこう、電話に出ちゃうことがあって。振り込め詐欺なんだろうけれど、そういうことはニュースでさんざん観てるから、逆にいたずらしちゃうよね。電話に出て、わざと遊んじゃうの。前になんかの調査だって電話があって、「家族構成は?」って聞かれて、「わたくしと女房と子供3人です」。で、「好きなタレントは?」 「ビートたけしさんです」って言ったら、ガチャンて切られちゃった(笑)。投資話でも「そんなに儲かるの? じゃその金貸してくれ」とか、けっこう遊んじゃうよね。

――そういう人生経験があると、映画に出ますよね。痛快になる旨味成分と言いますか。

今回の龍三なんか完全にそうだからね。だから、アイデアも尽きないよ。

――ジジイって、暴れても痛快ですよね。映画の主人公として、無敵だと思いました。

映画は、心地いいほうがいいよ。陰湿ないじめとか、皆でわーわーやるのはよくないから。ジジイが出てきてブン殴る、でも体力ないから先にバテて話し合おう、話せばわかる。暴力はいけないよって言ってたほうが面白いじゃない。ジジイが面白いのは、ジジイがタチ悪いからなんだよね。要するに、説教のしようがない。明日はないし、死ぬだけじゃねえかって、将来は考えない(笑)。そのジジイが徒党を組んで悪さすると、どうしようもない。紙オムツ出せとか恐喝しても、あのバアさんに気があんのかとかジジイ同士のケンカとか。だから、何でもできるんだよね。

https://youtu.be/y6z7qEXFS0c


映画『龍三と七人の子分たち』は、大ヒット上映中!

■参照リンク
『龍三と七人の子分たち』公式サイト
http://www.ryuzo7.jp/
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