少女たちがV系に傾倒するのは宝塚にハマる心理構造と同じ?心理学者に聞く「V系バンギャの深層心理」とは


心理学を専門として大学で教鞭をとり、同時にミュージシャンとしても活動する心理学者の川島洋先生。V系が登場する以前からロックシーンを見続けてきた川島先生いわく、ロックファンの中でもV系にハマる若い女の子には、特有の"心の動き"があるそう。そこで今回は、川島先生に「V系にハマる少女たちの深層心理」を教えていただきました!


■V系は女の子たちの力によって成長していった?

−−V系ロックが台頭した当時を知る川島先生ですが、当時のロックファンからの反応はどのようなものでしたか。

元々ハードロックの中にあるサブジャンルだったV系を、当時の男性ロックファンは、「メイクをして、チャラチャラしている奴ら」と偏見を持っていました。その一方で、若い女の子たちはV系の良さに敏感に反応し、熱狂的に支持。つまりV系は女の子たちの力によって、人気ジャンルに成長していったのです。


−−当時の女の子たちは、なぜV系に熱狂したのでしょうか。

大人の女性になることを戸惑う心理が原因だと考えられます。思春期は、身体的に大人へと成長し、性ホルモンが分泌されることで、異性への欲求が高まりはじめる時期です。しかし、イノセンスが残っているので気持ちも不安定になりがちです。


−−思春期の行き場のない気持ちが、V系へ向かわせるのでしょうか?

そうですね、V系バンドマンのような「中性的な存在」に気持ちを向けることで、異性への欲求を安全に解消できるという作用が働いていると思われます。女子中学生が同性の先輩に憧れを抱くこと、そして「ベルサイユのばら」や宝塚歌劇団にハマることも、精神構造的には同じですね。


■V系の世界観から得る、安心感

−−V系が若い女の子を惹きつける他の理由はありますか?

V系バンドが表現する「世界観」も大きな理由でしょう。これは心理学の「移行対象と移行領域」という考え方で説明することができます。「移行対象」とは、毛布やぬいぐるみのような、母親の手を離れて成長していく子供が、安心感を得るために大事にする物のことです。そしてその移行対象に接触できる場所を「移行領域」と呼びます。V系は少女たちの救いの場なんですね。ヘッドフォンで耳を塞ぎV系バンドの曲を聴くことは、V系バンドの世界観に身を委ねて、安心感を得ているという意味で「移行領域」に入る行為だと言えます。


−−つまり、V系バンドの生み出す世界観は、若い女の子にとって心の拠り所ということですか?

その通りです。身を委ねられる独自の世界観こそがV系バンドに求められていて、中世的で神秘的なイメージがあるからこそ、少女が自分を投影することができるのです。


今回は、若い女の子がV系にハマるメカニズムを心理学的に解説してくださった川島先生。後篇では、「大人とV系」の知られざる関係について熱く語っていただいたので、お楽しみに!


【プロフィール】
川島 洋(真奈美)
社会心理学者、大月短期大学非常勤講師、ESPミュージカルアカデミー講師、ギタリスト。研究領域は青年心理・ポピュラー音楽研究。共著に『常識力を問いなおす24の視点―時代をとらえる手がかりを得るために』などがある。その他、性同一性障害の当事者として性的マイノリティに対する理解を深めてもらうための活動も行なっている。
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