赤堀雅秋監督に聞く、衝撃作『葛城事件』を映画化した理由 「これは対岸の火事ではない」


『その夜の侍』(12)の赤堀雅秋監督の最新作は、名優・三浦友和演じる一家の長・葛城清が念願のマイホームを建て、理想の家庭を築く生活をスタートするも、その想いとは裏腹に無差別殺人事件の加害者家族になってしまうという衝撃すぎるホームドラマ。赤堀監督による原作舞台の映像化だが、なぜ改めてスクリーンで問うことに!? "二度と観たくない名作"とまでマスコミに言わしめた問題作『葛城事件』について、赤堀雅秋監督に聞く。


――まず、一家がダメになる元凶である父親・葛城清役の三浦友和さんの存在感が圧倒的で、かなりのクズ男っぷりがスクリーンを通してヒリヒリ伝わりました。

僕自身、撮影現場に入ってモニターを通して、凄いなあと感動していました。役者が演技をする時は、脚本上のキャラクターを具現化していく作業のなかでどうしてもわかりやすい表現になりがちですが、そうではなく曖昧模糊とした佇まいが体現できる表現力がすごいと思いました。国民的なスターでありながら、役者としての匿名性がある。本当に素晴らしいと思います。

――今回の『葛城事件』は、池田小事件や秋葉原連続通り魔事件など実際の事件がいくつかモチーフになっていますが、もともとの舞台を映像化したかった一番の理由は何でしょうか?

初めて監督した『その夜の侍』(12)の時に、映画監督の作業が中毒になるくらい面白かったんです。その後、次回作を撮るのであれば『その夜の侍』とは毛色の違う題材でいこうと思っていましたが、この『葛城事件』を映画にすることで面白くなるだろうという、インスピレーションでしかなかったのです。特に僕自身、社会に言いたいことがあったというわけではありません。拍子抜けをするようなことを言ってしまうようですが(笑)。


――でも、『その夜の侍』もですが、こういう事件に関心があるわけですよね?

そうですね。題材として取り扱うことは少なくないです。おそらく人間のアンタッチャブルな部分に惹かれるのだと思います。普段から部落差別のことなどに触手が伸びて、よくそういう本などを読みます。舞台版を作った当時、僕は死刑制度に興味があって、本を読み漁っていました。その中で、これが我々の日常の地続きにあり、対岸の火事ではないと考えるようになりました。

――事件が起こると報道はされますが、その先にあるもの、起こることまでは届かないものですよね。でも、我々は第一報の"その後"こそ、知りたいと思っている。

ブラックな映画を観たいという期待はあるかもしれませんが、それだけではなく、もしかすると自分自身もこういうことになってしまうかもしれないという事、たとえば家庭がある父親であれば、葛城清のようになってしまうかもしれないという不安や恐怖、想像力を喚起したい。もし観客にそれが喚起できたら、作り手としては、嬉しいです。

――本当は対岸の火事、自分とはまったく関係ない世界の話だと思いたいけれど、この映画はそうはさせてくれなかった(笑)。

そうなんです。僕自身もそうですが、日頃テレビを観ていて何かの事件で犯人が捕まった時など、「あ、これは死刑だな」とか、普通に言ってしまうものじゃないですか(笑)。これは自戒を込めて言いますが、まったく自分に関係がないとは言い切れないはずなんです。『葛城事件』を観て、テレビで流れる情報のもう半歩先を常に想像できたら。そうなれば世の中は平和になると思っています。けっこう本気でそう思ってます(笑)。


映画『葛城事件』は、新宿バルト9ほか全国大ヒット公開中!



(C)2016「葛城事件」製作委員会

■参照リンク
映画『葛城事件』公式サイト
katsuragi-jiken.com

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