「危うい匂いのする少女」だった異質なアイドル女優・葉月里緒奈


広末涼子や内田有紀、田中麗奈や優香、深田恭子...メジャーどころだけ見ても、そうそうたる顔ぶれが登場した90年代のアイドルシーン。その中で、とりわけ異色な存在であったのが、後に"魔性のオンナ"としても世間の注目を集めることとなる女優・葉月里緒奈だ。


1993年、ドラマ『丘の上の向日葵』(TBS)への出演を機に注目を集め、その後、CMにドラマにとひっぱりだこになるなど、瞬く間にアイドル女優としての地位を確立することとなった葉月の当時のキャッチコピーは「やる気! 元気! ハヅキ!!」であった。たしかに"17歳の新人アイドル女優"としてみればさほどの違和感を感じないコピーであるし、実際、当時の彼女は笑顔を絶やさなかったため、それこそ井脇ノブ子元代議士のキャッチコピーにしか見えないこのフレーズについても、誰ひとりツッコミを入れることはなかった。

だが、彼女を、デビューからリアルタイムで見続けてきた世代の者からすれば、当時から強烈な違和感を抱いていたというのが正直なところであるし、後の彼女を語る上では忘れてはならない「魔性のオンナ」としての要素が、既にこの頃から見え隠れしていたように思われてならないのだ。

当時、多くの有名商品の"顔"として起用された彼女は、CM業界でも活躍していた。その隠れた代表作と言えるのが、同時に彼女の"魔性"を感じさせる、まさしく「レジェンド」とも言える「チオビタドリンク」(大鵬薬品)のCMだ。1993年、彼女が18歳当時から放送されたこのCMシリーズは、「お父さん世代への労わり」的なアプローチがテーマとなっているようだ。しかし、作中で彼女が演じている少女の口から出る「嫌い...大っ嫌い!お父さんなんて大っ嫌い!」「お父さん、どうしてすぐに怒るの?そんなに怒ったら、血圧だってあがっちゃうよ?お父さん、がんばりすぎだよ...私のことより、自分のこと...」との言葉たちは、聞いている者に、どうしても普通の父娘関係だけではない何かを感じさせてしまうのだ。

実は、このCMにも使用されている曲「DOIN' THE DOING」で、彼女は不慣れな"歌手業"にも挑戦している。この曲の歌詞は、「気まぐれな猫のように 幸せを少しだけ かじればもうそれでいい」という一節から始まり、CMで使われているサビの部分も、「DOIN'THE DOING AT FIFTEEN O'CLOCK ため息ついた あなたが見える だからふたりは 愛に傷つく」と、父娘とは到底思えない男女の関係を感じさせる要素がヒシヒシと伝わってきてしまう。

このCMをリアルタイムで見ていた当時、特典としてついている「葉月里緒奈と生テレフォン」の応募券欲しさについつい購入してしまったCDに耳を傾けながら、葉月がCMで演じた少女は、きっと「本当の娘」ではなく、「父娘ほど歳の離れた年上の男性と禁断の関係を持ってしまった10代の少女」なのだろうと、勝手にその妄想を膨らませてしまったものである。折りしも当時、社会では10代の少女たちによる援助交際が急速に問題視されるようになった時期でもあり、こうしたある種の「危うさを持った少女たち」というのは、良くも悪くも、世のお父さん世代の男性陣から注目されていた存在であった。

勝手ながら筆者は、その代表格とも言うべきか、シンボリックな存在として、彼女を位置づけていたのである。こうした要素を持ったアイドルは、彼女の他にいなかったように思うし、だからこそ、前述の「やる気! 元気! ハヅキ!!」というキャッチコピーが生み出す独特な違和感が、実に印象的であったのだ。少なくとも筆者にとっては、葉月里緒奈という女優が、後年「魔性のオンナ」と呼ばれるようになったのは、「危うい匂いのする少女が"順調"に成長した」結果という解釈である。

同じくCMということで言えば、この「チオビタドリンク」以外にも、「ヨーグルト100」(ロッテ)CMも印象的だ。このCMで女子高生に扮する葉月は、視聴者と目線を共有する男子学生に対し、「男女の友情」を確認するかのようなセリフを後ろ向きに歩きながら投げかけ続け、終盤では、「男ってさー?...」という意味深なセリフと共に"流し目的な視線の移動"という実に印象的な演技を披露している。

正統派の10代としての演技だけではなく、このような「危うい匂いのする少女」の演技をこなせるという点も、彼女が後に実力派女優へと成長する可能性を十二分に感じさせていたと言えるだろう。そして危うい系の少女だったからこそ、その対極に位置するであろう、清涼感あふれる魅力的な女子高生役を演じることができたのかもしれない。
ちなみに、「危うい匂いのする少女」という観点で言えば、やはり、彼女を見出したとされる会田我路氏の存在も忘れてはならないだろう。彼は、ヌードものを中心に、「美少女写真」を数多く出していたことで知られる写真家。彼が撮影し、紆余曲折の末、1995年に発売されることとなった『里緒菜・デビュー前... 葉月里緒菜写真集』(ぶんか社)では、セーラー服姿の葉月が、鳥居の前で足を広げて立ち、なんとも不思議な微笑を浮かべるという、見ようによっては、いわゆる「お菓子系雑誌」(セーラー服、体操着、スクール水着をまとった少女たちが載るグラビア雑誌)の表紙のようでもあり、アイドル写真集の表紙としてみれば、かなり微妙な感じの1枚が表紙に選ばれている。

しかし、その微妙さこそが、彼女の中にある秘められた「魔性のオンナ」としての萌芽を感じさせることも事実。デビュー前ですでにここまでの完成度であったとするならば、会田氏でなくとも声を掛けただろうと思わず納得させられてしまう独特なフェロモンが出ているのだ。さらに特筆すべきはその特典。同写真集の発売当時、それこそ"デビュー前"に撮影したと思しき葉月の実に貴重なセーラー服姿の生写真を封入するという、ブルセラ商法さながらの"不可思議なこだわり"まで施されていた。通常、セーラー服を着た10代のアイドル少女といえば、普通なら清純さや清涼感がひしひしと伝わってくるものだが、同写真集からはそうしたベタな要素がほとんど感じられず、本作は、逆に独特なアングラ臭を放つ異色作となっており、そのことがより一層、葉月里緒菜という一人の女性が持つ魅力と、秘められた魔性のセンスを際立たせていたのである。

その後、葉月が本格的に人気女優として開花&成長し、同時に多くの浮名を流したことで、すっかり「魔性のオンナ」としてのイメージが定着していったことは、今となっては、多くの世人の知るところである。しかし前述のように、デビュー後間もない時期にも、既にその気配は漂いまくっていたのだ。歳不相応な魔性の色香をミドルティーンにしてそなえ、色香が芳醇さを増すがままに多くの男性ファンを魅了し続けている彼女。同時期に登場し、活躍したアイドルは多かれど、少なくともこのような特性を持った女優は、おそらく彼女だけではないだろうか。

文・鹿葉青娘

■葉月里緒奈 公式サイト
http://www.flyingbox.co.jp/actor_actress/hazuki-riona/

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