大友啓史監督、『秘密 THE TOP SECRET』は「今までの作品の中で自分自身の考え方を一番反映している映画」


清水玲子による原作を日本が世界に誇る天才映画監督、大友啓史が完全映像化した『秘密 THE TOP SECRET』が大ヒット公開中だ。"脳内"という人間の体内にある小宇宙を描いた本作は斬新なアイデアを非凡な演出力とセンスで描いた大傑作で、これまでの日本映画にはなかった逸品に。「個人的には今までの作品の中で、自分自身の考え方が一番反映している映画になっている」と語る大友監督に、『秘密 THE TOP SECRET』について語ってもらった。


■脚本開発中に『インターステラー』(14)を観て本当に悔しかった
 
今作の脚本を準備している時、クリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』(14)を試写会で観まして。ものすごく悔しく、そして刺激を感じたのを覚えています。やろうとしていることがどこか似ていると、そう思ったんですね。『インターステラ―』(14)は、宇宙空間という物理的な次元を超えて人と人との絆の奇跡を描いていく物語でした。僕が『秘密』で描きたかったのは、生死という身体の限界を越えて結ばれる人と人の絆でしたから。
 
ラストに近いシーンで、生きている人間(薪)と死んでいる人間(親友だった鈴木)が、まるで心を通わせて会話をしているような場面を作りたかったんですね。ノーランが物理的な空間や時間軸を越えて語ろうとしていたことを、僕は"脳内"という人間の体内にある小宇宙でできないかなと。


■映画が、映画の中だけにこもっていてはいけないような気になっていた
 
個人的には今までの作品の中で、自分自身の考え方が一番反映している映画になっているかもしれません。青木がリハビリに励む背景で、次々と悲惨な事件がラジオやテレビで流れていくシーンがありますが、本当にそういう環境で作った映画でもありますから。中高生によるいじめ殺人事件とか、母親が子供を置き去りにして衰弱死させるとか、ISによるテロ事件の頻発とか。脚本を書いている時、世の中でたくさん悲痛な出来事が次々と起こっていて。人間の理性はどこに行ってしまったのか、動物に戻ってしまっているのではないかというような事件を、さまざまな情報として受け取っていた。言ってみれば今回は、そういう風潮を真正面から浴び、引きずりながら作った映画なんですよね。
 
撮影中もモニターを観ている時も、集中して撮ってはいたけれど、かなり違うことを考えていたこともありました。安保とかね、どうなったのかなあって。なんとなく映画の中にこもっていてはいけないんじゃないかっていう、そういう気にさせることが世の中でいろいろ起きていて。たとえば陶芸家のように人里離れて山奥で集中して陶器を作っているほうが絶対に幸せなような気がしていて、それこそ映画でいうとスタジオですよ。でも今回、それじゃいけないんじゃないかって。むしょうにそういう気分に背中を押されていたような気がします。


■やったことがないことをやることが面白いと再確認
 
"物語の幅をどうやって広げるか?"みたいなことはつねづね考えていて、そういう意味では脳内の映像表現も含めて、今回も新たな試みをいくつもするチャンスであったことは間違いありません。おかげで当初の予定をいろいろな意味で飛び越えてしまいましたが(笑)、結局、それまで自分がやったことがないことをやることが自分自身も面白がれるんだなってことを、どこかで再確認した作品でもありますね。

『秘密 THE TOP SECRET』は全国公開中
(C)2016「秘密 THE TOP SECRET」製作委員会

■参照リンク
『秘密 THE TOP SECRET』公式サイト
http://himitsu-movie.jp/


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