「頑張ってアイドルを演じていた」 高橋由美子らが語るアイドル冬の時代 


AKB48の最新シングル「LOVE TRIP/しあわせを分けなさい」が発売初週で117万枚を売り上げて32作連続オリコン1位を獲得し、同じ週の2位にSUPER☆GiRLS、8位に乃木坂46が入るなど、アイドルグループのブームが続いている。

遡れば80年代にも松田聖子、中森明菜、小泉今日子、中山美穂らが次々にヒットを飛ばすアイドル歌手の黄金期があった。その狭間、1987年のおニャン子クラブ解散後から1998年のモーニング娘。のブレイクまでの約10年は"アイドル冬の時代"と呼ばれている。アイドル歌手のCD売上げが低迷し、ファンがガールポップやグラビアアイドル、CMアイドルなどに流れた。

一方、歌番組も激減してアイドル歌手がテレビに出られなくなった分、ライブハウスでのパフォーマンスやファンとの直接の交流に力を注ぎ、「会いに行けるアイドル」としてのAKB48の原型も生まれた。

当サイトで芸能関係の記事を書かせていただいている筆者は、おニャン子クラブの河合その子からアイドルにハマり、雑誌編集者になってアイドル関係の仕事ができると思ったら冬の時代にぶち当たった世代だ。一般には芸能史のなかでアイドルの存在がなかったかのようにされているこの時代を、当事者の端くれとして掘り起こしたいと、書籍「アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影」(シンコーミュージック)の出版に携わった。


"20世紀最後の正当派アイドル"と呼ばれ、冬の時代にソロで孤軍奮闘した高橋由美子らにインタビューをさせてもらった。


まったく個人的なことだが、彼女は筆者が初めてインタビューした芸能人でもあり、今回が17年ぶりの取材だった。高橋はもともとアイドルどころか歌うのも嫌々だったと言い、冬の時代で多くの女性タレントがアイドルと呼ばれるのを敬遠し、大手事務所イチオシの新人たちも去って行くなか、「空いた枠に『えっ、私ですか?』みたいにピョコンと入った感じ」と振り返っている。当時の内情を「アイドルの女子の世界って泥沼です。皆さんが思っているほどキラキラしたものなんか、ひとつもないから」とぶっちゃけつつ、「頑張ってアイドルを演じていた」とも。同時に、本格派ミュージカルに出演するようになって「『アイドルはこの程度』と思われたくなくて」相当の練習をしたことも語った。

また、冬の時代のなかでも日本レコード大賞を受賞するなど独走したWinkの相田翔子も、デビュー当初はイベントにまったく人が集まらず「客席が200ぐらいあったなかで、お客さんは1列目に5人だけ」だったことなどに触れている。それが大ブレイク後もトラウマのように残り、いまだにイベントやソロライブの本番前には「お客さんがいなかったらどうしよう......」と会場を覗いているという。

他に、アイドル歌手だった経歴があまり知られてない田中律子、元CoCoで最近シングルマザーだとカミングアウトしたはねだえりか(羽田恵梨香)、異例の事務所に入らないフリーのアイドルとなった宍戸留美らに登場してもらった。

冬の時代にも頑張っていたアイドルたちはいたし、苦境のアイドルを懸命に応援するファンもいた。そんな方たちに、時代が"冬"だからこそ熱くなった記憶を呼び起こしてもらえる一冊にはなったと思う。同時に、高橋由美子は今、アイドル時代から目標に掲げていた舞台女優として高い評価を受けていたりと、みな冬を乗り越え、いまだ歩みを止めていない。同じ時代を共有した世代は「もうひと踏ん張り」と、改めて励まされる部分もあるはず。この本を作るなかで、人を元気づけるというアイドルの本分を、彼女たちは今でも体現している気がした。

文・斉藤貴志

■参照リンク
高橋由美子 公式プロフィール
http://www.connie.co.jp/yumikotakahashi.html
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